2013.10.26更新

永久気管瘻とは、のど(咽頭、喉頭)やその近くに病気があって気管を塞いでしまう状態がある時に、呼吸のためにあける穴のことです。首のつけ根の前の部分に穴があき、ここから呼吸をするようになります。
 多くの場合、のどにできた腫瘍が気道を塞ぐ時におこなわれます。犬では気管が太く手術や手術後の管理がしやすいのですが猫では気管が細く管理が非常に難しいです。


このネコちゃんは喉にできた扁平上皮癌のために呼吸困難となっていました。いずれはがんの進行により亡くなってしまうのは理解していらっしゃいました。しかし今現在の苦しいこの状況をなんとかしてあげたいと仰られ、永久気管瘻の手術をおこないました。すでに気道はほぼ閉塞している状態でしたので麻酔をかけること自体がリスクでした。すばやく麻酔をかけ、可能であれば気管挿管をし、気道を確保します。気道が確保できなければすぐに皮膚を切開し気管にアプローチし、気管に穴をあけます。ここまでの作業はかなりすばやく行わなければなりません。気管に穴を開けてしまえば呼吸はできますのであとは落ち着いて作業ができます。


この時は気管チューブの挿管は不可能であったため太い留置針を気管入り口に刺し内筒を抜いてそこにカテーテルを入れ、酸素を注入し、その間にすばやく気管にアプローチし気管に穴をあけました。開けてしまえばあとは落ち着いて作業します。



皮膚と気管を縫い合わせます。穴の両脇の皮膚は穴の大きさに合わせ切り取ります。




手術が終わったところです。


手術後、麻酔から覚めたあとの状態です。手術前とは違い空気を存分に吸えるため、非常に楽そうです。










腫瘍の診断、治療に関しては西調布犬猫クリニックにご相談ください。

調布市だけでなく三鷹市、小金井市、府中市、稲城市、狛江市からも来やすい立地です。


投稿者: 制作

2013.10.26更新

レッグペルテス(大腿骨頭壊死)は成長期の小型犬に発症します。股関節で大腿骨(太ももの骨)の上側がジョイントしていますがその部分を大腿骨頭といいます。その大腿骨頭への血流が何らかの原因により障害されることで骨頭部分が壊死し変形します。本来ならツルツルで滑らかな状態ですがでこぼこな状態に変化していきます。当然、関節を動かす際に痛みが発生しびっこをひきます。とくに後ろ足を後ろに伸ばした時に痛みは強くなります。痛い足に重心をかけなくなり、筋肉がどんどん落ちていきます。治療は初期の状態であれば運動制限が有効なこともあります。しかし初期の段階では症状も軽微でレントゲン検査では判断が難しいことが多くあります。ゆえに症状が明らかでレントゲン検査でも明らかに骨に変化が出ている時点では運動制限による回復は難しく手術による治療が必要になります。手術法としては骨頭部分を切り取り、痛みを無くす骨頭切除術が一般的です。最近、人工骨頭による関節の全置換も一部機関で行われていますがまだまだ一般的とは言えません。骨頭切除術のあとは関節の可動範囲が半分くらいになってしまいますが、罹患する多くはスポーツドッグではなく小型犬ですので通常の生活をするうえで支障がでることはほぼありません。さらに術前から痛みにより関節可動範囲は狭くなっていますのでそれより悪くなるということはありません。骨頭切除後の重要なこととしてリハビリをしっかりやって行かなければなりません。リハビリをやらなかったためにせっかく手術したにもかかわらずその足をあまり使わなくなってしまうこともあります。




ヨークシャーテリアのレッグペルテスに対する骨頭切除術です。

皮膚を切皮したあと大腿二頭筋の頭側を分けていき股関節にアプローチします。


股関節にアプローチしたところです。大腿骨頭がみえます。


大腿骨頭を切り取ります。このとき角度が非常に重要で残った大腿骨側の断端が適切に切り取られていない場合にはその部位と寛骨とがこすれ、痛みが継続します。


残った大腿骨の断端をマイクロエンジンで滑らかにトリミングします。


トリミング後の状態です。これを丁寧に行うことで術後の痛みを無くすことができます。


次に筋肉の一部を残った大腿骨の内側に縫い付け、寛骨と大腿骨の断端が直接ぶつからないようにします。


その後は、分けた筋肉を元にもどし、皮下織、皮膚を縫合し終了です。


切除した骨頭です。通常はツルツルですが、細かい亀裂の他に大きな裂け目があります。



手術前のレントゲン写真です。左右比べると向かって左側の骨頭が変形しています。さらに筋肉の厚みがかなり薄くなっていることがわかります。
 
手術後のレントゲン写真です。骨頭がキレイに切除されています。



レッグペルテスは診断されたらなるべく早い時期に手術をします。手術を遅らせることで筋肉量はさらに低下し、さらに術後の足を使わない期間が長くなります。






若いワンちゃんの跛行、成長期の関節の痛み、後ろ足をあげているなどの症状の診断、治療は西調布犬猫クリニックまでご相談ください。

調布市はもちろん府中市、三鷹市、小金井市、武蔵野市、狛江市、稲城市からも来やすい立地です。


夜間救急時間外診療 随時 受付しております

投稿者: 制作

2013.10.25更新

犬猫の肛門の脇に肛門嚢という分泌腺に裏打ちされた袋があります。この肛門嚢(肛門腺と呼ばれることが多いと思いますが)の肛門につながる管が詰まると肛門嚢破裂を起こします。肛門嚢に感染が起こると化膿し肛門嚢炎という状態になります。これが肛門嚢破裂の原因になることもあります。肛門嚢炎が軽度であれば肛門嚢を絞り洗浄し、抗生剤の投与で回復することがあります。しかし重度の場合には抗生剤投与のみでは治癒までに長期間を要してしまったり、破裂した部位がふさがりはするが導管が詰まったままである場合には破裂を繰り返すといった事態になりかねません。ゆえに炎症や感染が重度であったり、導管が閉塞している場合には麻酔下での処置が必要になります。おしりを床や地面にこすりつけたり舐めたりする場合には動物病院での診察を受けましょう。



これは猫ちゃんの肛門嚢炎による破裂です。麻酔がかかっており横たわっています。右側がしっぽです。


肛門嚢を絞ったところです。膿汁が大量にでてきます。

さらに絞ると血様の膿汁がでてきました。

絞ったあとに洗浄を行います。


壊死した皮膚を取り除きます。さらに洗浄します。


肛門嚢から肛門へ続く導管を洗浄します。


創内の洗浄、周囲皮膚の消毒、手術部位を滅菌布で覆います。


新鮮創にするために血流の少ない周囲の皮膚を取り除きます。


血流が豊富な皮膚同士を縫合することで皮膚癒合をよくします。


皮下織を溶ける糸で縫合し、皮膚を寄せます。


ナイロンの糸で皮膚を縫合し、終了です。


7〜10日後に抜糸をして治療が終わりです。





繰り返し肛門嚢の破裂を起こす場合や慢性肛門嚢炎の場合には肛門嚢を切除することもあります。

これは犬の肛門嚢を切除しているところです。肛門嚢を切除することで肛門嚢の問題は解決できます。


黒っぽい袋が肛門嚢です。導管の基部で結紮し切除します。



最後に、肛門嚢が固く腫れてくる場合には肛門嚢腺癌等の可能性もありますので注意が必要です。

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2013.10.23更新

このワンちゃんは腹部の打撲でショック状態で来院されました。超音波検査で腹腔内に液体の貯留がみられました。レントゲン検査では胸部や骨に異常は認められませんでした。すぐに状態を安定化させるために治療をおこないました。点滴、鎮痛・鎮静や二次感染予防のための抗生剤投与などを行い、ある程度落ち着いたところで尿道から造影剤を注入しレントゲン撮影を行いました。これにより膀胱が破裂していることがわかりました。今回の打撲とは別ですが、尿管内に結石がみとめられました。

その後、約12〜24時間で状態を安定化させます。繰り返し血液検査を行い、尿毒症にならないように注意します。もし尿毒症や高カリウムになっていくようなら腹腔内にカテーテルを挿入し尿を持続的に排出させます。
 さらに状態が良くなってきたところで腹部の超音波検査を行ったところ、右側の尿管内に詰まっている結石が原因で腎臓内に尿がうっ滯していました(水腎症)。

 次の日、状態がかなりよくなったので膀胱破裂の整復手術をおこないました。さらに尿管結石による水腎症を放っておくと腎機能に悪影響がありますので、そちらも同時に摘出することにしました。

お腹を開くと血液が溢れていました。
 

腹腔内の血液と尿を吸引し、破裂した膀胱を確認。他の臓器に損傷はみられませんでした。 
 

次に尿管の結石の位置を確認し、メスで尿管を切開し結石を取り出します。結石は4㎜大で尿管壁に食い込むように存在していました。
 


尿管内にカテーテルを挿入し生理食塩水で洗い流します。洗い終わったら細い糸を使って尿管を閉鎖します。だいたい2㎜間隔で縫合します。
 

次に破裂した膀胱の処置を行います。壊死した部位を切り取り新鮮創にし、縫合して膀胱を閉鎖します。
 

腹腔内をよく洗浄し、腹壁、皮下織、皮膚を縫合糸閉鎖します。


4日後に退院しました。7日後の検診時には食欲、元気ともに100%で水腎症改善していました。結石分析の結果はシュウ酸カルシウムでした。今後は結石ができないように尿石症用の療法食を継続していく必要があります。







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2013.10.05更新

 去勢手術は病気の予防として重要な役割があります。男性ホルモンの影響が指摘されている前立腺肥大、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニアなどに対して予防効果があります。さらに問題行動に対しての抑制効果もあります。放浪行動、尿マーキング、マウンティング、攻撃行動などを矯正するのに効果的です。問題行動の習慣化を未然に防ぐための早期の去勢手術も有効であると考えられています。
 いつ去勢手術をした方がいいのかと言うと、個体差がありますがだいたい生後6〜12ヶ月で性成熟を迎えますのでこれより早期に手術するのが望ましいとされています。小型犬であれば6ヶ月齢、大型犬であれば1歳くらいと考えればいいと思います。
 陰嚢内に睾丸が降りてこないことを潜在精巣(停留精巣)といいますが、この場合腫瘍形成の可能性が高くなります。生後6ヶ月過ぎても潜在精巣の場合は早期に去勢手術することをおすすめします。


去勢手術の紹介です

切皮は陰嚢の少し手前にします。長さは睾丸の縦の長さと同じくらいです。




睾丸を出します。このとき睾丸は総鞘膜という丈夫な膜で覆われていますのでその膜を切開します。
 

次に睾丸から総鞘膜を分離し睾丸を引き出します。


次に蔓状静脈叢、精巣動脈・神経、精管、精管動脈を結紮し、睾丸を切除します。
 

睾丸を切除したあと、生体側の精巣動静脈・神経、精管を総鞘膜内にもどします。この操作を怠ると腹腔内で精管が尿管を絞扼し水腎症を招くことがあります。


この後は反対側の睾丸も同様に切除します。その後は皮下織を縫合し、皮膚を縫合して手術終了です
 


手術時間は10分程度です。麻酔導入から術野の消毒、手術、覚醒を含めると約30分〜40分です。



去勢手術について

☆まず、来院時もしくはお電話にて予約をしていただきます。

☆手術当日は朝の食餌を抜いてきてください。前の日の夜ゴハンは9時くらいまでに与えてください。猫ちゃんで日頃、食餌を常に食べれる状態にしている場合も9時以降は食べさせないようにします。

☆手術当日は午前中の10時頃までに連れてきていただいて昼の12時〜16時の間に手術を行います。

☆手術の前に一般的な身体検査や貧血が無いか、白血球や血小板の数がしっかりあるか、さらに腎臓や肝臓の数値などの血液検査を行います。さらにご希望があれば胸部のレントゲン検査(別途料金がかかります)を行います。高齢の場合にはさらに追加の血液検査や超音波検査をおすすめすることがあります。とくに問題が無ければ手術を行います。

☆当院では去勢手術の場合は日帰りとなっております。ただし入院をご希望される場合には対応可能です。その場合別途入院費が加算されます。

☆当院では手術に伴う「痛み」に関し、徹底して管理しております。去勢・避妊手術だからといって手を抜くことはありません!ご安心下さい。

☆去勢手術や避妊手術は多くのネコちゃんが通る道です。手術をするのはこれが最初で最後の場合もあり、人生のビッグイベントです。ですから当院ではなるべく手術侵襲を少なくし、かつ疼痛管理を徹底し、ストレスを最小限にする努力をしています。「手術したんだから痛くて当たり前」、「動物は痛みに強いから」、「痛みをとったら逆に動き回っちゃうから」なんて考えはもうやめましょう。自分が手術をしたときの痛みを想像してみてください。もう病院に行きたくなくなっちゃいますよね。当院は長いお付き合いのために最善を尽くします。

調布市、府中市、三鷹市、狛江市、稲城市で手術を検討されている方は当院におまかせください。

                        東京都 調布市 西調布犬猫クリニック 
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投稿者: 制作

2013.09.30更新

猫の皮膚にできる腫瘍は多岐にわたりますが、代表的なものとして肥満細胞腫、扁平上皮癌、基底細胞種などがあります。猫の皮膚の悪性メラノーマはそんなに多くありません。悪性メラノーマは転移性が高く予後もいいとは言えません。治療は転移が無ければ外科的に切除することが第一選択です。補助治療として放射線治療や抗がん剤治療があります。

手術を紹介します
このネコちゃんは10歳齢でお腹の横に3.5㎝大の悪性メラノーマが発生しました。


まず腫瘍から充分マージンをとり皮膚を切開します。幸い腫瘍のできた場所が体幹部であったため皮膚を大きく切除しました。
 

次に、腫瘍の底部を切開していきます。このネコちゃんは脂肪がかなり多くありましたので、腫瘍の底部にある脂肪組織をすべて取り除きました。


腫瘍を切除したところです。肉眼状キレイにとれていることを確認し、さらに底部の組織を綿棒で拭って腫瘍細胞が残っていないか顕微鏡で確認します。


あとは、皮下織を縫合糸、皮膚を縫合して終了です。


病理組織検査の結果は悪性メラノーマ。腫瘍はすべて取りきれているということでした。
しかし悪性メラノーマは転移性の高い腫瘍なので術後から約半年の間、抗がん剤治療を行いました。
手術から2年経過した現在も局所再発や遠隔転移は無く元気に暮らしています。





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2013.09.23更新

尿路結石症とは腎臓、尿管、膀胱、尿道に結石が存在するものです。90%以上が膀胱、尿道に見られます。結石の種類はリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、リン酸カルシウム、シスチンなどがあります。ストラバイト結石は細菌感染によって尿がアルカリ性になり形成される場合があります。結石が尿路に存在すると粘膜を損傷したり、刺激によりポリープを作ったり、結石が細菌の温床となり尿路感染を引き起こしたり、結石が尿管や尿道に詰まると尿毒症、腎不全を引き起こしたりします。治療には外科的に結石を取り出し、その後は食餌管理を徹底することが重要です。

尿管結石の手術を紹介いたします。
このワンちゃんは12歳のヨークシャーテリアです。症状はゴハンを食べないということでした。各種検査により右側腎臓内、右側尿管、膀胱に結石が認められました。それ以外に異常は認められませんでした。

右側の尿管を示しています。二本の綿棒の間にあるのが尿管です。結石が詰まっており尿管が拡張しています。
 

メスで尿管を切開します。この時は7ミリほどの長さを切開しました。


白いものが尿管内の結石です



取り出しているところです


尿管内、腎盂内を何度も洗浄し、結石を繰り返しとり出します。



結石を取り出したのち、尿管を縫合します。かなり細い糸で縫合していますので見にくいと思います。


空豆のような形をしているのが腎臓でそれに続く尿管を示しています。


その後、膀胱内の結石を取り出し、手術は終わりです。取り出した結石です。上の写真は尿管内からで舌の写真は膀胱から取り出したものです。




手術後、このワンちゃんは痛みから解放され食欲はもちろんのこと、活動性もかなりよくなりました。私も尿管結石を患ったことがありますが、ものすごく痛いです!一晩中のたうち回りました。その後薬でなんとか回復しましたが、腎臓にまだ石があるそうでまたいつ落ちてくるか恐怖です。尿路結石症は正しい食餌管理とお水をたくさん飲むことと適度な運動が重要です。




調布市、府中市、三鷹市、狛江市、稲城市で犬猫の手術を検討されている方は、西調布駅から徒歩7分の西調布犬猫クリニックまで

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投稿者: 制作

2013.09.21更新

肛門嚢アポクリン腺癌は肛門の横にある肛門嚢(肛門腺しぼりをするところです)のなかのアポクリン腺という分泌腺から発生する腫瘍です。腫瘍随伴症候群として高カルシウム血症が50%の割合で起こります。転移率も高く、近くのリンパ節へ50%の確率で転移します。
 おしりの周りが固く腫れてきたり、多飲多尿(高カルシウム血症による)、便が出にくいなどの症状がある場合には動物病院にご相談ください。
 
手術をご紹介します。
このわんちゃんは左の肛門腺が腫大しています。
皮膚を切開したところです。
 

腫瘍周囲の組織を剥離していきます。肛門括約筋に固着していますので肛門括約筋ごと切除します。肛門括約筋は全周の約3分の1以上切除してしまうと便失禁をおこしてしまう可能性があるためそうならないように、かつ腫瘍を取りきるように切除します。このとき便失禁を気にしすぎて腫瘍を残しては意味がありませんので注意が必要です。
 

直腸に接して存在しますので直腸に穴を開けないようにすることも重要です。最後に肛門嚢の出口のところで切り取り終了です。
 

切除後の写真と切除した腫瘍です。
 

骨盤腔内のリンパ節が腫大していたので、そちらも切除しました。


手術後の写真です。かなり肛門括約筋を切除したので術後2ヶ月はたまに便がポロッと落ちてしまうことがあったようですがそれ以降は便失禁はありませんでした。








このワンちゃんは手術後から抗がん剤の治療を行いました。お尻の部位の再発は無く順調に生活していましたが、手術してから1年4ヶ月後に骨盤近くの内腸骨リンパ節の腫大が見つかりました。内腸骨リンパ節に腫瘍が転移しそのまま大きくなり続けると大腸や尿道を圧迫し排便排尿ができなくなってしまう可能性があります。そこで開腹し腫瘍が転移したリンパ節を切除しました。
 
腰の部分で左右の後ろ足にいく血管が二つに分かれますが、ちょうどその分かれる部位の間に腫瘍が存在していましたので繊細な手技が必要でした。切除後の写真ですが大動脈、後大静脈の分岐部が見えます。


陰茎の横を縫合して終了です。


その後、このワンちゃんは2回目の手術の1年後に肺に腫瘍が転移し呼吸不全で亡くなりました。しかしそれまで、おしりの手術部位に再発はなく、便も滞ることなく出続けました。腫瘍を発見してから2年4ヶ月の間、生活の質をよく保ちながら元気に生活できたことを飼い主様はとても満足されていました。




東京都調布市 西調布犬猫クリニック

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2013.09.06更新

前足の肘より遠位というか手首から肘までの部分を前腕といいます。その部分の骨はとう骨と尺骨という骨が二本並んであります。ネコの前腕の骨は太くて折れにくいのですが、イヌの前腕の骨は先に行くほど細くなって行き特に小型犬では前腕の手首側3分の1の部分の骨折が多く見られます。トイ・プードル、ポメラニアン、イタリアン・グレーハウンド、マルチーズなどで前肢の骨折はよく起こります。抱いていて、そこから飛び降りただけでも折れることがありますので注意が必要です。治療はほとんどの場合外科手術による整復が必要です。骨折部のズレがわずかな場合には外固定(いわゆるギプス)による治療もありますが適切な固定、適切な運動制限ができない場合に癒合不全を起こすことが多々ありますので基本的には手術による整復をおすすめします。手術で整復する場合、いくつか方法があります。固いステンレスの細い棒(Kワイヤー、ステインマンピン)を骨折部をまたいで骨髄の部分に入れ固定する方法と骨をステンレスの棒で数カ所串刺しにしてその棒を固定する創外固定法、さらにステンレスのプレートと呼ばれる板とネジで固定するプレート固定法などがあります。当院ではもっとも確実な方法としてプレートによる固定を行っています。若い場合には髄内ピンによる固定を行うこともあります。


1:トイプードルの前腕骨折です。骨が細いので細くて薄いプレートを使います。体重によって厚さを選択します。この場合はスタッキングといって薄いプレートを2枚重ねています。
  




2:同じくトイプードルの例です。この例もスタッキングを行っています。
 
 


3:これは猫の前腕の複雑骨折の例です。骨折片がバラバラになっているので骨折部分にはネジを入れられません。プレートの両脇にネジ穴が集中して真ん中部分は強度を上げるためネジ穴のあいていないプレートを使用しています。




4:マルチーズの例です。このコは体重が軽いため薄いプレートを1枚使用しています。
 


小型犬の前腕骨折は適切な治療が行われればほぼ治すことができますが、もともと骨が細くて薄い場所でさらに血流も少ない場所なので癒合不全がおこることもあります。その原因としてもっとも多いのが不適切な固定によるものです。安易に外固定を選択したり、髄内ピン単独での治療であったり、ピンが短すぎる、太すぎる、プレートが薄すぎる、短すぎるなどにより固定がうまくいかないと最悪骨が溶けてしまいます。そうなるとさらに治療は困難を極め断脚などを考えないといけない事態になることもあります。基本的に人間と動物の骨折治療は異なります。人間の場合ギプスを巻いて、あとは動かさないでおけばいい場合もありますが、動物の場合は確実に動きます。さらに必死にギプスを取ろうとします。ゆえにしっかりとした固定が必要なのです。何事も最初が肝心。「はじめに軽くやってみてなんて」考えだと後々大変な思いをするかもしれません。

前腕骨折のレントゲン写真


手術後のレントゲン写真


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2013.09.01更新

肝臓にできた肝細胞癌の手術例をご紹介します。肝臓は胆のうを境に左区域と右区域に分けられます。一般的に右区域にある腫瘍を摘出する手術の方が左区域のものより難易度が高いとされています。さらに犬の肝臓は6枚の葉に分かれており、葉の先に腫瘍があるよりも根元にあるほうが難易度があがります。肝臓はご存知のようにとても脆い臓器でしかも内部に血管がたくさんあります。一歩間違えば大出血を引き起こします。

このワンちゃんは10歳のラブラドールです。肝臓の内側右葉(右区域)と方形葉(左区域)に腫瘍が存在しており、内側右葉の腫瘍はかなり大きく、CT画像では後大静脈との距離は1.5センチ無いくらいでした。このまま放っておけば破裂し出血死を招く恐れもあったため手術にて摘出することにしました。

手で支えているのが方形葉にある腫瘍です。こちらは葉の先端に存在しますので容易に切除可能です。
 

次に内側右葉の腫瘍を切除します。視界を良好に保つため胸腔まで切開しています。かなりリスクの高い手術ですので視野を確保することが重要です。丸くて白いのは胆のうです。胆のうの向かって左側にあるのが腫瘍です。
   

   

肝葉へ入っていく動脈、静脈、門脈を分離し結紮していきます。ここで確実に結紮しないと大出血を引き起こします。血管の結紮部位は奥深いところですので慎重に行います。
   

切除した腫瘍です。病理検査では肝細胞がんでした。腫瘍は取りきれているという判断でした。


写真で見るとこんなものかという感じですが、視野確保のための胸骨切開や横隔膜の切開、大出血に備えての大血管周囲への駆血テープの準備などかなり時間のかかる手術です。その甲斐あってこのワンちゃんは3年経った今も肝臓腫瘍の再発は無く元気で暮らしています。お年ですのでかなり足が弱ってきていますがゴハンはよく食べるということです。


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