犬猫の肛門の脇に肛門嚢という分泌腺に裏打ちされた袋があります。この肛門嚢(肛門腺と呼ばれることが多いと思いますが)の肛門につながる管が詰まると肛門嚢破裂を起こします。肛門嚢に感染が起こると化膿し肛門嚢炎という状態になります。これが肛門嚢破裂の原因になることもあります。肛門嚢炎が軽度であれば肛門嚢を絞り洗浄し、抗生剤の投与で回復することがあります。しかし重度の場合には抗生剤投与のみでは治癒までに長期間を要してしまったり、破裂した部位がふさがりはするが導管が詰まったままである場合には破裂を繰り返すといった事態になりかねません。ゆえに炎症や感染が重度であったり、導管が閉塞している場合には麻酔下での処置が必要になります。おしりを床や地面にこすりつけたり舐めたりする場合には動物病院での診察を受けましょう。
これは猫ちゃんの肛門嚢炎による破裂です。麻酔がかかっており横たわっています。右側がしっぽです。
肛門嚢を絞ったところです。膿汁が大量にでてきます。
さらに絞ると血様の膿汁がでてきました。
絞ったあとに洗浄を行います。
壊死した皮膚を取り除きます。さらに洗浄します。
肛門嚢から肛門へ続く導管を洗浄します。
創内の洗浄、周囲皮膚の消毒、手術部位を滅菌布で覆います。
新鮮創にするために血流の少ない周囲の皮膚を取り除きます。
血流が豊富な皮膚同士を縫合することで皮膚癒合をよくします。
皮下織を溶ける糸で縫合し、皮膚を寄せます。
ナイロンの糸で皮膚を縫合し、終了です。
7〜10日後に抜糸をして治療が終わりです。
繰り返し肛門嚢の破裂を起こす場合や慢性肛門嚢炎の場合には肛門嚢を切除することもあります。
これは犬の肛門嚢を切除しているところです。肛門嚢を切除することで肛門嚢の問題は解決できます。
黒っぽい袋が肛門嚢です。導管の基部で結紮し切除します。
最後に、肛門嚢が固く腫れてくる場合には肛門嚢腺癌等の可能性もありますので注意が必要です。
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