2013.09.01更新

肝臓にできた肝細胞癌の手術例をご紹介します。肝臓は胆のうを境に左区域と右区域に分けられます。一般的に右区域にある腫瘍を摘出する手術の方が左区域のものより難易度が高いとされています。さらに犬の肝臓は6枚の葉に分かれており、葉の先に腫瘍があるよりも根元にあるほうが難易度があがります。肝臓はご存知のようにとても脆い臓器でしかも内部に血管がたくさんあります。一歩間違えば大出血を引き起こします。

このワンちゃんは10歳のラブラドールです。肝臓の内側右葉(右区域)と方形葉(左区域)に腫瘍が存在しており、内側右葉の腫瘍はかなり大きく、CT画像では後大静脈との距離は1.5センチ無いくらいでした。このまま放っておけば破裂し出血死を招く恐れもあったため手術にて摘出することにしました。

手で支えているのが方形葉にある腫瘍です。こちらは葉の先端に存在しますので容易に切除可能です。
 

次に内側右葉の腫瘍を切除します。視界を良好に保つため胸腔まで切開しています。かなりリスクの高い手術ですので視野を確保することが重要です。丸くて白いのは胆のうです。胆のうの向かって左側にあるのが腫瘍です。
   

   

肝葉へ入っていく動脈、静脈、門脈を分離し結紮していきます。ここで確実に結紮しないと大出血を引き起こします。血管の結紮部位は奥深いところですので慎重に行います。
   

切除した腫瘍です。病理検査では肝細胞がんでした。腫瘍は取りきれているという判断でした。


写真で見るとこんなものかという感じですが、視野確保のための胸骨切開や横隔膜の切開、大出血に備えての大血管周囲への駆血テープの準備などかなり時間のかかる手術です。その甲斐あってこのワンちゃんは3年経った今も肝臓腫瘍の再発は無く元気で暮らしています。お年ですのでかなり足が弱ってきていますがゴハンはよく食べるということです。


東京都調布市
西調布犬猫クリニック

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