猫の尿道閉塞に対する会陰尿道造瘻術 調布市 府中市 三鷹市 武蔵野市 稲城市 動物病院
2014.08.29更新
猫の下部尿路疾患(FLUTD)のなかで尿道結石はかなりの割合を占めています。尿道結石による尿路閉塞で問題になるのはほとんどがオスです。オスの陰茎とその中を通る尿道は先に行くほど細くなり詰まりやすくなります。小さな石や砂、そして炎症性産物等が詰まるとそこで痛みが発生し、気にしてペロペロ舐めるようになります。尿道口が炎症を繰り返し、その結果として尿道口は完全に閉塞してしまったり、針の先程度の開口部になったりします。こうなってしまった場合には療法食などの内科的管理は不可能です。外科的に尿道を太くするような手術が必要です。その手術法を会陰尿道造瘻術と言います。この手術の方法はたくさんあります。一般的にはウイルソン法という方法が多くなされます。しかし最近では陰茎包皮の粘膜部分を利用した特殊な方法もあります。当院でもこの陰茎の包皮粘膜部分を利用した方法を採用しています。
この3歳の猫さんは2年前から尿石症に対し内科的な管理を行ってきたということです。しかし現在は尿がポタポタとしたたるようにしか出ず、排尿時間も長く、トイレに出たり入ったりを繰り返しているとのことでした。陰茎先の尿道口は肉眼では確認することができず細いカテーテルを挿入しようとしても不可能な状態でした。そこで会陰尿道造瘻術を実施いたしました。

まず皮膚を切開します。

つぎに陰茎の周囲を剥離し、陰茎を引き出します。なるべく尿道の太い部分を尿道の出口として利用するためです。

そして尿道を切開します。かなり根元の部分まで切開すると太いカテーテルでも簡単に挿入できるようになります。

尿道にカテーテルが入っているところです。尿道の中には尿が見えます。
この太い尿道部分に包皮粘膜を縫合します。

包皮粘膜を尿道に縫合した状態です。

最後に皮膚を縫合し、数日間カテーテルを入れておきます。

カテーテルを抜いたあとの状態です。術後1週の写真です

抜糸後の状態です。排尿状態は良好です。

もう一例ご紹介します。この猫さんも同じように尿道の先端が閉塞してしまっています。陰茎の先端が慢性的な炎症により肥厚しています。尿は陰茎の先端から1㎝の場所からにじみ出ているような状態です。

手術前の様子です

陰茎の周囲の組織を剥離しています

陰茎を周囲組織から分離し、陰茎を骨盤腔内から引き出したところです。ここまで十分に陰茎を引き出すことで、太い尿道にアプローチできます

尿道先端から細いカテーテルを挿入しようとしていますが狭窄しているのでまったく入っていきません。

陰茎の途中で尿道を切開しカテーテルを挿入したところです。この部位では細いカテーテルしか入りません

尿道を根元の方に切開し、太い尿道にカテーテルを挿入しています。上の写真と比べるとカテーテルの太さがわかると思います。この太い尿道に包皮を縫合し、手術が終わりです。

手術後の写真です。カテーテルを数日は留置しておきます。

抜糸時の状態です。排尿状態も良好です。

さらにもう1例
この猫さんは腎臓にも膀胱にも結石が存在していましたが、どの結石もサイズ的には2〜3mm程度のものでした。療法食を食べているにもかかわらず結石による尿道閉塞を繰り返してしまうとのことで当院に来院されました。当院を受診した時にはすでに腎臓の機能がかなり悪化していましたので10日間点滴入院で腎臓の数値を下げる治療を行ったあと手術を行いました。10日後の数値も正常値には遠くすでに不可逆的な損傷を負っていると考えられました。通常であれば膀胱切開し膀胱内の結石を除去したのち会陰尿道瘻術を行うのがいいと思われますが、腎機能と結石のサイズを考慮し会陰尿道瘻術のみを行いました。

陰茎の先端から細いカテーテルが尿道内に入っています

尿道が太くなっている部位まで切開し、太いカテーテルを挿入しているところです

手術終了時の写真です。術後の排尿状態は良好で腎臓が悪いながらも元気に暮らしています。

抜糸時の様子です

従来のウイルソン法はとてもよい方法ですが尿道粘膜と皮膚を縫合するため、術後に狭窄を起こしてしまうことが問題になることがあります。しかし包皮粘膜を利用する方法は尿道粘膜と包皮粘膜を縫合しますので狭窄が起こりにくいという利点があります。さらに見た目も手術前とさほど変わりませんので飼い主様にとっても受け入れやすい方法だと思います。しかし欠点としては手術の難易度が上がりますので手術時間が余計にかかります。どの方法を選択するかは猫さんそれぞれの状態に合わせて考えていくというのが現実です。
最近では療法食などの内科的管理によって良好に経過することがほとんどです。ゆえに外科的な対処が必要となることが減ってきていると思います。しかし陰茎を舐め壊したりすることで尿道の開口部が狭くなることで排尿時間が長くなっていたり、常に膀胱内に蓄尿がある場合には外科的な対処を早い段階で行わないと腎臓に負担がかかることがあります。排尿がうまくできていないと感じたら外科的な対処を考えたほうがいいかもしれません。動物病院での診察を受けましょう。
この3歳の猫さんは2年前から尿石症に対し内科的な管理を行ってきたということです。しかし現在は尿がポタポタとしたたるようにしか出ず、排尿時間も長く、トイレに出たり入ったりを繰り返しているとのことでした。陰茎先の尿道口は肉眼では確認することができず細いカテーテルを挿入しようとしても不可能な状態でした。そこで会陰尿道造瘻術を実施いたしました。
まず皮膚を切開します。
つぎに陰茎の周囲を剥離し、陰茎を引き出します。なるべく尿道の太い部分を尿道の出口として利用するためです。
そして尿道を切開します。かなり根元の部分まで切開すると太いカテーテルでも簡単に挿入できるようになります。
尿道にカテーテルが入っているところです。尿道の中には尿が見えます。
この太い尿道部分に包皮粘膜を縫合します。
包皮粘膜を尿道に縫合した状態です。
最後に皮膚を縫合し、数日間カテーテルを入れておきます。
カテーテルを抜いたあとの状態です。術後1週の写真です
抜糸後の状態です。排尿状態は良好です。
もう一例ご紹介します。この猫さんも同じように尿道の先端が閉塞してしまっています。陰茎の先端が慢性的な炎症により肥厚しています。尿は陰茎の先端から1㎝の場所からにじみ出ているような状態です。
手術前の様子です
陰茎の周囲の組織を剥離しています
陰茎を周囲組織から分離し、陰茎を骨盤腔内から引き出したところです。ここまで十分に陰茎を引き出すことで、太い尿道にアプローチできます
尿道先端から細いカテーテルを挿入しようとしていますが狭窄しているのでまったく入っていきません。
陰茎の途中で尿道を切開しカテーテルを挿入したところです。この部位では細いカテーテルしか入りません
尿道を根元の方に切開し、太い尿道にカテーテルを挿入しています。上の写真と比べるとカテーテルの太さがわかると思います。この太い尿道に包皮を縫合し、手術が終わりです。
手術後の写真です。カテーテルを数日は留置しておきます。
抜糸時の状態です。排尿状態も良好です。
さらにもう1例
この猫さんは腎臓にも膀胱にも結石が存在していましたが、どの結石もサイズ的には2〜3mm程度のものでした。療法食を食べているにもかかわらず結石による尿道閉塞を繰り返してしまうとのことで当院に来院されました。当院を受診した時にはすでに腎臓の機能がかなり悪化していましたので10日間点滴入院で腎臓の数値を下げる治療を行ったあと手術を行いました。10日後の数値も正常値には遠くすでに不可逆的な損傷を負っていると考えられました。通常であれば膀胱切開し膀胱内の結石を除去したのち会陰尿道瘻術を行うのがいいと思われますが、腎機能と結石のサイズを考慮し会陰尿道瘻術のみを行いました。
陰茎の先端から細いカテーテルが尿道内に入っています
尿道が太くなっている部位まで切開し、太いカテーテルを挿入しているところです
手術終了時の写真です。術後の排尿状態は良好で腎臓が悪いながらも元気に暮らしています。
抜糸時の様子です
従来のウイルソン法はとてもよい方法ですが尿道粘膜と皮膚を縫合するため、術後に狭窄を起こしてしまうことが問題になることがあります。しかし包皮粘膜を利用する方法は尿道粘膜と包皮粘膜を縫合しますので狭窄が起こりにくいという利点があります。さらに見た目も手術前とさほど変わりませんので飼い主様にとっても受け入れやすい方法だと思います。しかし欠点としては手術の難易度が上がりますので手術時間が余計にかかります。どの方法を選択するかは猫さんそれぞれの状態に合わせて考えていくというのが現実です。
最近では療法食などの内科的管理によって良好に経過することがほとんどです。ゆえに外科的な対処が必要となることが減ってきていると思います。しかし陰茎を舐め壊したりすることで尿道の開口部が狭くなることで排尿時間が長くなっていたり、常に膀胱内に蓄尿がある場合には外科的な対処を早い段階で行わないと腎臓に負担がかかることがあります。排尿がうまくできていないと感じたら外科的な対処を考えたほうがいいかもしれません。動物病院での診察を受けましょう。
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