2013.09.30更新

猫の皮膚にできる腫瘍は多岐にわたりますが、代表的なものとして肥満細胞腫、扁平上皮癌、基底細胞種などがあります。猫の皮膚の悪性メラノーマはそんなに多くありません。悪性メラノーマは転移性が高く予後もいいとは言えません。治療は転移が無ければ外科的に切除することが第一選択です。補助治療として放射線治療や抗がん剤治療があります。

手術を紹介します
このネコちゃんは10歳齢でお腹の横に3.5㎝大の悪性メラノーマが発生しました。


まず腫瘍から充分マージンをとり皮膚を切開します。幸い腫瘍のできた場所が体幹部であったため皮膚を大きく切除しました。
 

次に、腫瘍の底部を切開していきます。このネコちゃんは脂肪がかなり多くありましたので、腫瘍の底部にある脂肪組織をすべて取り除きました。


腫瘍を切除したところです。肉眼状キレイにとれていることを確認し、さらに底部の組織を綿棒で拭って腫瘍細胞が残っていないか顕微鏡で確認します。


あとは、皮下織を縫合糸、皮膚を縫合して終了です。


病理組織検査の結果は悪性メラノーマ。腫瘍はすべて取りきれているということでした。
しかし悪性メラノーマは転移性の高い腫瘍なので術後から約半年の間、抗がん剤治療を行いました。
手術から2年経過した現在も局所再発や遠隔転移は無く元気に暮らしています。





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2013.09.23更新

尿路結石症とは腎臓、尿管、膀胱、尿道に結石が存在するものです。90%以上が膀胱、尿道に見られます。結石の種類はリン酸アンモニウムマグネシウム(ストラバイト)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、リン酸カルシウム、シスチンなどがあります。ストラバイト結石は細菌感染によって尿がアルカリ性になり形成される場合があります。結石が尿路に存在すると粘膜を損傷したり、刺激によりポリープを作ったり、結石が細菌の温床となり尿路感染を引き起こしたり、結石が尿管や尿道に詰まると尿毒症、腎不全を引き起こしたりします。治療には外科的に結石を取り出し、その後は食餌管理を徹底することが重要です。

尿管結石の手術を紹介いたします。
このワンちゃんは12歳のヨークシャーテリアです。症状はゴハンを食べないということでした。各種検査により右側腎臓内、右側尿管、膀胱に結石が認められました。それ以外に異常は認められませんでした。

右側の尿管を示しています。二本の綿棒の間にあるのが尿管です。結石が詰まっており尿管が拡張しています。
 

メスで尿管を切開します。この時は7ミリほどの長さを切開しました。


白いものが尿管内の結石です



取り出しているところです


尿管内、腎盂内を何度も洗浄し、結石を繰り返しとり出します。



結石を取り出したのち、尿管を縫合します。かなり細い糸で縫合していますので見にくいと思います。


空豆のような形をしているのが腎臓でそれに続く尿管を示しています。


その後、膀胱内の結石を取り出し、手術は終わりです。取り出した結石です。上の写真は尿管内からで舌の写真は膀胱から取り出したものです。




手術後、このワンちゃんは痛みから解放され食欲はもちろんのこと、活動性もかなりよくなりました。私も尿管結石を患ったことがありますが、ものすごく痛いです!一晩中のたうち回りました。その後薬でなんとか回復しましたが、腎臓にまだ石があるそうでまたいつ落ちてくるか恐怖です。尿路結石症は正しい食餌管理とお水をたくさん飲むことと適度な運動が重要です。




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2013.09.21更新

肛門嚢アポクリン腺癌は肛門の横にある肛門嚢(肛門腺しぼりをするところです)のなかのアポクリン腺という分泌腺から発生する腫瘍です。腫瘍随伴症候群として高カルシウム血症が50%の割合で起こります。転移率も高く、近くのリンパ節へ50%の確率で転移します。
 おしりの周りが固く腫れてきたり、多飲多尿(高カルシウム血症による)、便が出にくいなどの症状がある場合には動物病院にご相談ください。
 
手術をご紹介します。
このわんちゃんは左の肛門腺が腫大しています。
皮膚を切開したところです。
 

腫瘍周囲の組織を剥離していきます。肛門括約筋に固着していますので肛門括約筋ごと切除します。肛門括約筋は全周の約3分の1以上切除してしまうと便失禁をおこしてしまう可能性があるためそうならないように、かつ腫瘍を取りきるように切除します。このとき便失禁を気にしすぎて腫瘍を残しては意味がありませんので注意が必要です。
 

直腸に接して存在しますので直腸に穴を開けないようにすることも重要です。最後に肛門嚢の出口のところで切り取り終了です。
 

切除後の写真と切除した腫瘍です。
 

骨盤腔内のリンパ節が腫大していたので、そちらも切除しました。


手術後の写真です。かなり肛門括約筋を切除したので術後2ヶ月はたまに便がポロッと落ちてしまうことがあったようですがそれ以降は便失禁はありませんでした。








このワンちゃんは手術後から抗がん剤の治療を行いました。お尻の部位の再発は無く順調に生活していましたが、手術してから1年4ヶ月後に骨盤近くの内腸骨リンパ節の腫大が見つかりました。内腸骨リンパ節に腫瘍が転移しそのまま大きくなり続けると大腸や尿道を圧迫し排便排尿ができなくなってしまう可能性があります。そこで開腹し腫瘍が転移したリンパ節を切除しました。
 
腰の部分で左右の後ろ足にいく血管が二つに分かれますが、ちょうどその分かれる部位の間に腫瘍が存在していましたので繊細な手技が必要でした。切除後の写真ですが大動脈、後大静脈の分岐部が見えます。


陰茎の横を縫合して終了です。


その後、このワンちゃんは2回目の手術の1年後に肺に腫瘍が転移し呼吸不全で亡くなりました。しかしそれまで、おしりの手術部位に再発はなく、便も滞ることなく出続けました。腫瘍を発見してから2年4ヶ月の間、生活の質をよく保ちながら元気に生活できたことを飼い主様はとても満足されていました。




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2013.09.06更新

前足の肘より遠位というか手首から肘までの部分を前腕といいます。その部分の骨はとう骨と尺骨という骨が二本並んであります。ネコの前腕の骨は太くて折れにくいのですが、イヌの前腕の骨は先に行くほど細くなって行き特に小型犬では前腕の手首側3分の1の部分の骨折が多く見られます。トイ・プードル、ポメラニアン、イタリアン・グレーハウンド、マルチーズなどで前肢の骨折はよく起こります。抱いていて、そこから飛び降りただけでも折れることがありますので注意が必要です。治療はほとんどの場合外科手術による整復が必要です。骨折部のズレがわずかな場合には外固定(いわゆるギプス)による治療もありますが適切な固定、適切な運動制限ができない場合に癒合不全を起こすことが多々ありますので基本的には手術による整復をおすすめします。手術で整復する場合、いくつか方法があります。固いステンレスの細い棒(Kワイヤー、ステインマンピン)を骨折部をまたいで骨髄の部分に入れ固定する方法と骨をステンレスの棒で数カ所串刺しにしてその棒を固定する創外固定法、さらにステンレスのプレートと呼ばれる板とネジで固定するプレート固定法などがあります。当院ではもっとも確実な方法としてプレートによる固定を行っています。若い場合には髄内ピンによる固定を行うこともあります。


1:トイプードルの前腕骨折です。骨が細いので細くて薄いプレートを使います。体重によって厚さを選択します。この場合はスタッキングといって薄いプレートを2枚重ねています。
  




2:同じくトイプードルの例です。この例もスタッキングを行っています。
 
 


3:これは猫の前腕の複雑骨折の例です。骨折片がバラバラになっているので骨折部分にはネジを入れられません。プレートの両脇にネジ穴が集中して真ん中部分は強度を上げるためネジ穴のあいていないプレートを使用しています。




4:マルチーズの例です。このコは体重が軽いため薄いプレートを1枚使用しています。
 


小型犬の前腕骨折は適切な治療が行われればほぼ治すことができますが、もともと骨が細くて薄い場所でさらに血流も少ない場所なので癒合不全がおこることもあります。その原因としてもっとも多いのが不適切な固定によるものです。安易に外固定を選択したり、髄内ピン単独での治療であったり、ピンが短すぎる、太すぎる、プレートが薄すぎる、短すぎるなどにより固定がうまくいかないと最悪骨が溶けてしまいます。そうなるとさらに治療は困難を極め断脚などを考えないといけない事態になることもあります。基本的に人間と動物の骨折治療は異なります。人間の場合ギプスを巻いて、あとは動かさないでおけばいい場合もありますが、動物の場合は確実に動きます。さらに必死にギプスを取ろうとします。ゆえにしっかりとした固定が必要なのです。何事も最初が肝心。「はじめに軽くやってみてなんて」考えだと後々大変な思いをするかもしれません。

前腕骨折のレントゲン写真


手術後のレントゲン写真


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2013.09.01更新

肝臓にできた肝細胞癌の手術例をご紹介します。肝臓は胆のうを境に左区域と右区域に分けられます。一般的に右区域にある腫瘍を摘出する手術の方が左区域のものより難易度が高いとされています。さらに犬の肝臓は6枚の葉に分かれており、葉の先に腫瘍があるよりも根元にあるほうが難易度があがります。肝臓はご存知のようにとても脆い臓器でしかも内部に血管がたくさんあります。一歩間違えば大出血を引き起こします。

このワンちゃんは10歳のラブラドールです。肝臓の内側右葉(右区域)と方形葉(左区域)に腫瘍が存在しており、内側右葉の腫瘍はかなり大きく、CT画像では後大静脈との距離は1.5センチ無いくらいでした。このまま放っておけば破裂し出血死を招く恐れもあったため手術にて摘出することにしました。

手で支えているのが方形葉にある腫瘍です。こちらは葉の先端に存在しますので容易に切除可能です。
 

次に内側右葉の腫瘍を切除します。視界を良好に保つため胸腔まで切開しています。かなりリスクの高い手術ですので視野を確保することが重要です。丸くて白いのは胆のうです。胆のうの向かって左側にあるのが腫瘍です。
   

   

肝葉へ入っていく動脈、静脈、門脈を分離し結紮していきます。ここで確実に結紮しないと大出血を引き起こします。血管の結紮部位は奥深いところですので慎重に行います。
   

切除した腫瘍です。病理検査では肝細胞がんでした。腫瘍は取りきれているという判断でした。


写真で見るとこんなものかという感じですが、視野確保のための胸骨切開や横隔膜の切開、大出血に備えての大血管周囲への駆血テープの準備などかなり時間のかかる手術です。その甲斐あってこのワンちゃんは3年経った今も肝臓腫瘍の再発は無く元気で暮らしています。お年ですのでかなり足が弱ってきていますがゴハンはよく食べるということです。


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