2015.06.11更新

仔猫の尿道閉塞は一般的ではありません。
尿道閉塞は一般的に成猫が患う病気で、原因は主に尿道結石やそれによる炎症産物が詰まって起こります。閉塞を繰り返すうちに尿道が狭窄してしまったり、内科的な治療を行っても結石形成を止められない場合には手術により尿道を広げる手術が必要になります。
今回の仔猫さんは親(野良猫さん)がいなくなってしまい、それを保護し育てていたのですが、仔猫同士がおっぱいと勘違いし陰茎を吸い続けたことにより、陰茎の先が欠損してしまったり、尿道の開口部が閉塞してしまったことによりおこりました。生後4ヶ月になるまでは細々となんとか排尿できていたり、尿が全然でない場合には細い針でお腹から膀胱に針を刺して抜いたりしていたのですが、飼い主様のなんとかできないかという強い要望により、手術にて尿道を形成することにしました。

雄の仔猫ですが、ご覧のように陰茎の先が欠損してしまい、包皮もありません。尿道開口部は肉眼的には確認できません。膀胱を強く圧迫すると、わずかに尿が滲み出てくるという状態です。この時点で腎臓の数値も上昇しており、尿毒症により嘔吐や食欲不振がみられました。


仔猫なのでなんとか複雑な手術法ではなく、なるべく単純な方法で治せないものかと考えました。


まず、陰茎周囲の皮膚に切り込みを入れ、陰茎をわずかに引き出しました。このとき陰茎周囲にわずかに残る皮膚の無毛部を皮膚側にできる限り残すようにしました。


そして、尿道をなるべく中心部で切り開きました。

切り開いた部位の尿道粘膜とわずかに残した皮膚の無毛部を細い糸で縫合しました。


尿道の広さは十分で1ミリほどのカテーテルが余裕で入るくらいになりました。


手術後のようすです。


抜糸時の様子です。尿道粘膜と皮膚の無毛部がうまく癒合しました。この時点で、排尿に問題は無く、腎臓の数値も正常な値に戻りました。


生後7ヶ月時点、手術から3ヶ月後の状態です。去勢手術を行った際の状態です。尿道の開口部も十分な広さを確保しています。


膀胱を圧迫してみると十分な太さの尿が出ました。めでたしめでたし。
本人は今まで何事も無かったように元気に暮らしています。



投稿者: 制作