2014.07.07更新

目の角膜を覆っている涙が蒸発しにくくなるように(要は、目が乾きにくくなるよう)に眼の表面に対し油を分泌する分泌腺が瞼にあります。マイボーム腺といいます。マイボーム腺腫とはそれが腫瘍化したものです。小さな時は特に悪さはしませんが、大きくなると角膜を傷つけたり、表面が自壊し、出血や感染を起こします。人でも眼にゴミが入るとゴロゴロしてとても不愉快ですよね。マイボーム腺腫が角膜を擦るようになるとかなり不快感を感じるようになり床にこすりつけることがあります。


この13歳のワンちゃんは眼瞼の腫瘤が1年前から徐々に大きくなってきました。高齢という理由でこれまで治療はされていませんでした。当院に来院されたときにはしょっちゅう表面が自壊し出血を繰り返しているということでした。

確かに高齢ではありますが、血が眼の中に入りそれを気にして擦ったり、目やにが多かったりと生活の質が落ちていました。このままではいずれ角膜表面にびらんや潰瘍を起こす可能性ありますので手術にて切除することにしました。

上眼瞼と下眼瞼にひとつづつ大きなマイボーム腺腫がみられます。これは麻酔がすでにかかっているところです。眼のまわりは毛を刈っております。


下から見たところです


瞼を開いたところです。かなり深くまで腫瘍が入り込んでいます。


取り残すと再発する可能性がありますので、慎重に切開します。


切除したところです。


瞼の内側の粘膜を溶ける糸で縫い合わせます。


皮膚を縫合します。このとき瞼の端がズレないように丁寧に縫い合わせます。


同様に下眼瞼の腫瘤を切除します。手術部位周囲が赤くなっているのは局所麻酔を注入した際の内出血です。


切除した腫瘤です


手術後6ヶ月の外観です。向かって右側が手術をした方です。上眼瞼の腫瘤がかなり大きかったためやや反対側に比べ目が小さく見えます。




現在は、眼を気にすることは無く、快適に生活しているとのことです。飼い主様も大変満足されていました。



眼瞼の腫瘍は良性のマイボーム腺腫ばかりではありませんので注意が必要です。
このワンちゃんは眼瞼炎として治療したが反応が悪く組織生検を行ったところ肥満細胞腫グレード3という非常に悪性度の高い腫瘍であった例です。眼球摘出や骨を含め広範囲に切除しました。










眼瞼のマイボーム腺腫は小さければ、問題になることはありません。しかし大きくなると非常に厄介な腫瘍です。ある程度大きくなる場合には治療を考えた方がいいでしょう。また良性のマイボーム腺腫ではなく、他の悪性腫瘍の可能性もありますので注意が必要です。安易に経過を見ずに動物病院で診察を受けましょう。
 

西調布犬猫クリニック

投稿者: 制作