院長ブログ

2022.08.11更新

 

調布市、三鷹市、府中市の皆様、こんにちは

東京都調布市の西調布犬猫クリニックです。

 

膵臓は、消化器の中でも比較的マイナーな臓器で、その役割についてはあまり良くご存知ない方もいらっしゃることでしょう。

ワンちゃんの場合は右上の腹部に位置していて、胃から十二指腸に沿うように存在している臓器で、主に消化酵素の分泌を行っています。

今回はそんな膵臓に起こる「急性膵炎(きゅうせいすいえん)」について詳しく解説します。

 

▼急性膵炎とは?

膵炎とは、膵臓に炎症反応が起こる病気で、急性膵炎と慢性膵炎の2つに大きく分けることができます。

今回解説する急性膵炎は、本来、十二指腸で働く消化酵素(トリプシン)が膵臓で活性化されてしまうことにより、炎症反応が生じる病気です。

激しい嘔吐や腹部痛を伴うことから、ワンちゃんの異常には気づきやすいといえます。

 

▼急性膵炎の原因

膵臓は「トリプシノゲン」と呼ばれる「トリプシン」の前駆物質を産生します。

トリプシノゲンの状態であれば酵素としての活性を持っていないので、膵臓にダメージを及ぼすことはありませんが、何らかの理由で活性化されると消化作用を発揮します。

つまり、トリプシノゲンが膵臓でトリプシンになってしまうと、たんぱく質分解酵素としての作用を発揮して、膵臓自体を消化し始めてしまうのです。その結果、炎症反応が生じます。

 

◎根本的な原因は?

上記はあくまで急性膵炎が発生するメカニズムであり、根本的な原因は現状わかっていません。

高脂肪食を習慣的に食べていたり、内分泌疾患を患っていたりすると、急性膵炎のリスクが高まるものと考えられています。

油っぽいものを誤食した後に発症することもあります。

 

◎発症リスクが高い犬種は?

基本的にすべて犬種に発症リスクがありますが、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエルなどは、比較的高リスクといえます。年齢に関しては中高齢で多いとされています。

 

▼急性膵炎の症状

犬の急性膵炎では、元気の消退、食欲不振、嘔吐、下痢、腹部痛などの症状が認められます。ショック状態に陥って連れて来られることもあります。

また、腹部が床で圧迫されるのを避けるために、伏せの状態でお尻だけ持ち上げる「お祈りポーズ」が見られることもあります。

いわゆる“プレイバウ”とはまったく意味が異なるため、十分な注意が必要です。

 

▼急性膵炎の治療法

犬の急性膵炎の特効薬は存在していないため、基本的には対症療法となります。具体的には、次に挙げる方法で症状の緩和をはかります。

 

◎輸液による循環血液量の回復・維持

急性膵炎の症状を緩和する上で最も有効的な方法のひとつが輸液です。

静脈点滴によって循環血液量が回復し、膵臓への灌流量も確保されるため、炎症を引き起こしている物質を希釈することにつながります。

その結果、消化酵素による自己消化を抑制することができます。

 

◎薬物療法

今現在、認められる症状には各種薬剤で対応します。具体的には、吐き気を抑える制吐剤、痛みを抑える鎮痛剤、胃酸の産生を抑える制酸剤などを用いて症状の緩和に努めます。

・制吐剤
・鎮痛剤
・制酸剤

▼急性膵炎の予防方法

急性膵炎を予防するためには、まず食生活から見直しましょう。

高脂肪食をとっている場合は低脂肪食へと切り替え、肥満であればダイエットすることも必要です。人間が食べているものを与えることは極力、控えてください。唐揚げや豚カツを食べてしまったり、サラダ油を飲んでしまったりして発症することが多々ありますのでキッチンやテーブルに近づけないということも大事ですね。

適切な運動を行うことも、結果的には急性膵炎の予防につながります。また、かかりつけ病院で定期的に検診を受けることも大切です。

すいい正常な膵臓(PANCREAS)

ぐ膵炎を発症した膵臓(PANCREAS)

 

 

症例の紹介

症例①

肥満気味のトイ・プードルで、急性膵炎を起こしたケースがありました。獣医師から体重の減量の指示を受けていたにも関わらず、可愛さゆえに要求されるがままにおやつや人が食べているご飯のおかずをあげていたそうです。2日前から嘔吐を繰り返し、食欲もなくグタっとしていた様です。当院に来院した際には総胆管閉塞により黄疸も見られました。各種検査を行い急性膵炎と診断。入院治療が必要でした。2週間の入院ののち無事退院されましたが、一時は播種性血管内凝固DICも発症し危険な状態に陥ったこともありました。人でも暴飲暴食が膵炎の原因になることもあります。ワンちゃんも適切な量のゴハンで適切な体重を維持することが重要ですね。

症例②

ミニチュア・シュナウザーで3日前から10回以上吐いているとのことで来院されました。腹痛もみられ、腹部を触るとヒンっと鳴き声をあげました。普段から中性脂肪やコレステロール値が高く、脂質代謝異常の可能性があり脂質代謝を促進するサプリメントを飲んでいました。当院に来院後、血液検査、超音波検査などを行い、膵炎と診断しました。入院治療とし、初期から積極的に治療を行い、5日ほどで食欲が回復し退院しました。ミニチュア・シュナウザーなどの犬種は犬種特異的に脂質代謝異常が多く、脂質代謝異常が膵炎の発症に関与することがあるように思えます。

このように肥満や脂質代謝異常などは膵炎を発症するリスクとなり得ますので普段から気をつけてみてほしいですね。いずれにせよ何度も嘔吐したりや重度の腹痛は膵炎の危険なサインなので、すぐに動物病院で診察を受けましょう。

 

 

さいごに


犬の膵炎は、命にかかわることもある病気です。適切な食事管理によって予防できる場合もある一方、病後に高脂肪食を与えすぎると再発したり、慢性化することもあります。気をつけていても突然起きてしまう急性膵炎もありますが、誤食をさせないよう徹底して、予防につとめましょう。

 

▼まとめ

今回は、犬の急性膵炎について解説しました。

急性膵炎はワンちゃんにとって珍しい病気ではないものの、重症化させると命に関わる深刻な病態へと発展しかねませんので、早期発見・早期治療が重要となります。普段から体重や食事の管理をしっかりと行い、ワンちゃんの行動の変化にはすぐに気付けるにしていてください。

少しでも気になることがあれば、いつでも当院までご相談ください。

 

調布市、三鷹市、府中市にお住まいの方はぜひご相談ください。もちろん他の地域からのご相談もお受け致しております。

西調布犬猫クリニック

 ①

投稿者: 西調布犬猫クリニック

2022.08.04更新

調布市、三鷹市、府中市の皆様、こんにちは

東京都調布市の西調布犬猫クリニック、動物看護師のウタダです。

 

ブログをご覧いただきありがとうございます。
突然ですが、皆さまは"猫エイズ"というものをご存知ですか? 


猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染により起こる症状を『猫エイズ』といいます。

このウイルスは、感染したからといってすぐに症状が出るわけではありません。ウイルスを持った状態を"キャリア"といい、自分の免疫でウイルスの活動を抑えている状態です。

しかし、免疫力が下がりウイルスが増殖してしまうと猫エイズを発症してしまいます。


発症すると、人間のエイズのように免疫不全に陥り、色々な病気にかかりやすくなってしまいます。そして病状が悪化すると最終的に亡くなってしまう病気です。
感染経路としては、母猫からの感染、交尾、猫同士の喧嘩による咬傷です。

猫から、人・犬など他の動物に感染することはありません。また、完全室内飼育で、猫エイズキャリアの猫と接する事が無ければ、ほぼ感染する可能性はありません。

ワクチンは存在しますが、100%予防できるものではないので、感染猫との接触を避ける為にも完全室内飼育にすることが感染対策として重要です。

 

しかし、元野良猫さんで、保護した時点でキャリアの場合もあるかと思います。ウイルスを持つ子が全て猫エイズを発症するわけではありません。

出来るだけその子の免疫力を落とすことがないように、ストレスの軽減や生活環境の整備など、猫ちゃんが快適に過ごせるような工夫が発症する可能性を低下させることにつながります。

例えば、猫ちゃんは高いところを好むので、キャットタワーなど上下運動ができるものを設置したり、ストレス発散のために、一日の中で遊ぶ時間を作ってあげたりすると良い思います。

また、猫ちゃんは綺麗好きなので、なるべくトイレは清潔を保ち、食事処とトイレは離して置いてあげるとより良いと思います。
猫免疫不全ウイルスのキャリアに関わらず、大切な猫ちゃんに生涯を快適に過ごしていただく為に様々な工夫をしていきましょう!

 

ところが病原体とは怖いもので、どんなに動物や人が頑張っても勝てないことはあります。

もしも猫エイズを発症してしまっても、飼い主さまは決してご自身を責めないでください。飼い主さまが猫ちゃんを思ってした行動は必ず伝わっています。

さらなる愛情をたっぷりかけて、その先を過ごしていく事が大切だと思います。

猫免疫不全ウイルスの抗体検査は当院でも行っておりますので、ご希望の方はお申し付けください!

 

西調布犬猫クリニック 動物看護師ウタダ

投稿者: 西調布犬猫クリニック

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