犬のリンパ腫|腫瘍認定医が症状や原因、治療法について解説
調布市、三鷹市、府中市、他の地域の皆様、こんにちは
東京都調布市の西調布犬猫クリニックです。
今回は犬のリンパ腫について解説いたします。
リンパ腫とは?
リンパ腫とは、リンパ系の細胞が腫瘍化してしまった状態を指します。リンパ系細胞は白血球の1種であり、T細胞やB細胞、ナチュラルキラー細胞などが含まれます。
犬のリンパ腫は悪性腫瘍全体の7-24%を占めるとても発生頻度の高い腫瘍です。犬のリンパ腫はリンパ節や脾臓に認められることが多いです。
リンパ腫の症状
犬がリンパ腫にはさまざまな型があり、それぞれ症状が異なります。最も多い病型は多中心型で、その他には胃腸管型や皮膚型、縦隔型などがあります。
それぞれの病型で見られる症状は下記のとおりです。
・多中心型リンパ腫
犬ではリンパ腫の70-85%がこれに該当します。多中心型リンパ腫を発症すると、下顎や浅頸、腋窩、鼠径、膝窩などの体表リンパ節が左右対称に腫大するのが特徴的です。
全身状態は問題ないことも多いですが、元気や食欲がなくなってしまうこともあります。
・胃腸管型リンパ腫
犬のリンパ腫の10%程度が胃腸管型リンパ腫と言われており、多中心型リンパ腫に次いで多い病型になります。小腸や結腸、胃などに腫瘍が発生します。
症状としては嘔吐や下痢、血便、食欲不振、元気消失、体重減少などが考えられます。
・皮膚型リンパ腫
皮膚型リンパ腫が占める割合は、犬のリンパ腫のうちの5%未満です。発症すると皮膚や粘膜に腫瘤を形成したり、皮膚に炎症や潰瘍、かさぶたなどが見られたりすることがあります。
・縦隔型リンパ腫
犬ではあまりみられない病型です。縦隔とは左右の肺の間の空間で、心臓や気管、食道、大動脈などがここに存在しています。
胸の中に腫瘤が形成されてしまうことで、呼吸が荒くなってしまったり、呼吸困難に陥ってしまったりすることがあります。
・その他の病型
まれではありますが、眼や中枢神経、腎臓、筋肉、肝臓などにリンパ腫が発生してしまうことがあります。発生した場所によってさまざまな症状がみられるようになります。
リンパ腫の原因
リンパ腫の原因はまだはっきりとはわかっていません。特定の遺伝子の変異が発症に関与している可能性が示唆されています。特定の犬種に多く見られる傾向もあります。
リンパ腫の診断
リンパ腫が疑われる場合、血液検査やレントゲン検査、超音波検査、針生検、病理組織検査などを行うことがあります。
・血液検査
血液検査を行うことで全身の状態を評価します。リンパ腫の犬では貧血や血小板の減少、高カルシウム血症などがみられることが多いです。肝臓や腎臓などの臓器にリンパ腫が発生していれば、それらに関する項目の異常が確認されることもあります。
・レントゲン検査、エコー検査
レントゲン撮影やエコー検査を行うことで、体表リンパ節や胸の中、お腹の中のリンパ節の腫れがみつかることがあります。
・針生検
リンパ節が腫大している場合、リンパ節に直接針を刺して細胞を採取し顕微鏡で観察することでリンパ腫の可能性を評価することができます。お腹の中のリンパ節が腫れている場合はエコーや内視鏡を使いながら実施することもあります。
・病理組織検査
手術によりリンパ節を摘出し、病理組織検査を行うことでより正確に診断することが可能です。針生検でリンパ腫が疑われる場合に実施されることが多いです。
リンパ腫の治療
犬のリンパ腫の治療では化学療法や外科療法、放射線療法などが利用されます。リンパ腫が一箇所にのみ発生している場合には外科療法や放射線療法が行われることもありますが、
基本的には抗がん剤による化学療法が実施されることが多いです。
リンパ腫の予防
残念ながら犬のリンパ腫を予防する方法はありません。
そのため犬の体を日頃からよく観察し、早期発見および早期治療をすることがとても大切です。1年に1回程度の健康診断もおすすめです。