犬のジアルジア症ー下痢・軟便で疑うべき寄生虫ー
こんにちは。西調布犬猫クリニック看護師の朝倉です。
「犬の下痢が続いている」「何が原因かわからない」「どのタイミングで動物病院に行くべきか悩んでいる」といった不安を抱えていませんか? 犬の下痢は、一時的な体調不良から、命に関わる重篤な病気まで、原因が多岐にわたります。 このコラムでは、犬の下痢の主な原因を紹介し、その中でも、子犬や保護犬、多頭飼育の環境、外で過ごす時間が長い犬に多い寄生虫感染「ジアルジア」という原虫による感染症について解説していきます!
犬の下痢の原因は?【考えられる6つの主な理由】
1.食事内容の変化:急なフード変更や「人の食べ物」による消化不良
2.ストレスによる下痢:飼育環境やお留守番
3.寄生虫感染:回虫、鉤虫、ジアルジアなどの寄生虫
4.ウイルス/細菌感染:犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、サルモネラ菌など
5. 慢性腸炎・IBD(炎症性腸疾患)
6. 腫瘍や重篤な病気 :高齢犬に多いのが「消化管の腫瘍」や「膵炎」「肝疾患」「腎不全」など、全身性の疾患による下痢
犬の下痢の原因のひとつ:ジアルジア感染症
一見元気そうなのに、いつまでも水っぽい下痢が治らない…
そんなとき、ただの食あたりやストレスではなく「ジアルジア」という原虫による感染症が原因となっている可能性があります。
ジアルジアは犬や猫だけでなく、人にも感染する人獣共通感染症です。特に、子犬や保護犬、多頭飼育の環境ではよく見られ、目に見えないのに感染力が極めて強いのが特徴です。
🐶 ジアルジアの2つのすがた
犬のお腹の中にすむ**「ジアルジア」**という小さな寄生虫には、2つのかたちがあります。
🟣 シスト(うんちにまざって出てくる)
とても小さなカプセルみたいな形。
土や水の中で長く生存でき、ほかの犬や動物にうつす「たね」みたいなものです。
👉 うつる原因になるのがこのシスト!
🟢 栄養型(犬のお腹の中で元気に動く)
雨のしずくみたいな形で、ぴょこぴょこ動き、
犬の腸の中で増え、下痢やお腹の不調をおこします。体外では生存できないため人にはあまりうつりません。
👉 お腹をこわすのはこっち!下痢のもと!
ジアルジア症の症状
ジアルジアは、小腸に寄生する原虫です。
ジアルジア症で見られる症状は、以下の通りです。
・下痢(粘液まじりの水様性の便が続く、脂肪性)
・体重減少
・食欲不振
・腹痛
上記では、幼犬が感染した場合に多く見られる症状で、成犬では感染しても症状がみられず不顕性感染となる場合が多く、子犬や高齢犬で免疫力が落ちている犬では症状が強く出る傾向があります。
ジアルジア症に感染する原因
ジアルジアの感染経路は主に汚染された水や感染動物の糞便です。犬の糞便中に排泄されるシスト(耐久性のある卵のようなもの)を介して感染します。公園や散歩中に他の犬の便に接触したり、汚れた水を舐めたりすることで簡単に感染してしまいます。また、グルーミングの際に毛についたシストを飲み込むことでも感染します。保護施設やペットショップなどでは、集団感染が見られることも珍しくありません。
🐾 犬のジアルジア感染サイクル
🌀 感染の流れを4つのステップで!
① 犬のお腹の中のジアルジア「栄養型」
犬の腸の中には、小さな寄生虫(栄養型)がすみついています。動きまわって腸で増えると、
下痢などの原因に!
② うんちにまじって出てくる(シスト)
ジアルジアは「シスト」というかたいカプセルの形になり、うんちの中に出てきます。
このシストが感染源になります。
③ 汚れた水たまりや草の上に広がる
シストは水たまり、草むら、土の中で何週間も生き続けます。
他の犬がにおいをかいだり、なめたりすると
体に入ってしまうことがあります。
④ 別の犬がそれを口に入れて…また感染!
ジアルジア症にかかってしまったら
*検査方法
ジアルジアは糞便検査を用いて検査します。ジアルジアは感染した犬の便に常に排出されるわけではないため、短期間で複数回の糞便検査をおこないます。
・顕微鏡検査(直接塗抹法)→栄養型の検出
栄養型の検出は、排泄から長時間経過していない新鮮な便を用います。
・顕微鏡検査(浮遊法)→嚢子(シスト)の検出
・PCR検査(遺伝子検査)外部機関へ依頼
通常の糞便検査(院内検査)では検出が難しいDNAやRNAレベルで検査可能
*治療方法と感染対策
ジアルジアの治療は、単に下痢止めを使用するだけでは根本的な解決にはなりません。原虫を体から完全に排除することが重要です。 治療薬としてメトロニダゾールやフェンベンダゾールというお薬などを治療に用いることが一般的であり、これにより原虫の活動を抑え、再発を防ぎます。
ジアルジアは非常に感染力が強いため、同居している犬や猫が無症状であっても検査・治療を行うことが推奨されます。特に無症状の成犬の場合、定期的に検査することで感染の早期発見につながります。
さらに、下痢によって脱水症状が疑われる場合は、水分補給のために点滴をおこなうこともあります。
ジアルジアは一度治ったとしても再感染のリスクはあるため、清掃や消毒をし常に環境を清潔に保つことが大切になります。犬が使用しているものや接触している場所は清掃・消毒をおこない、治療が終わった後も続けましょう!
消毒をおこなう場所⬇️
・床
・家具やカーペット
・食器や飲水器
・タオルやおもちゃ、ベッドなど
ジアルジア症の予防方法
感染後の治療だけでなく、日常生活の中で予防対策を取ることが重要です!
💡今日からできるジアルジア対策
・飲み水や生活環境の清潔を徹底する
・水道水以外の水(たまり水や公園の水たまり)は飲ませないようにする
・犬が使用する食器や寝具はこまめに洗浄・消毒をおこなう
・定期的な便検査の実施
ー画像はいるー
など
ジアルジアは子犬でかかりやすいため、子犬を迎えた場合は動物病院で糞便検査を行うことをおすすめします!症状が出ていないジアルジア症や他の寄生虫感染を見つけることができるかもしれません。排便からあまり時間が経過してなければ、糞便のみを持参しても検査はできるので、お気軽に動物病院に相談してみましょう🏥
さらに、感染犬との接触でもジアルジアがうつることがあります。多頭飼いで生活している家庭、ペットホテルやドッグランなど複数の犬が集まる場所で遊んだあとは、下痢などがないか注意しましょう!
まとめ
犬の下痢が続くときは「ジアルジア」の可能性があります。 正確な検査と適切な治療、そして生活環境の改善によって、再発や他の犬への感染を防ぐことができます。 調布市、三鷹市、府中市近隣で犬の下痢やジアルジアにお悩みの方は、ぜひ西調布犬猫クリニックまでご相談ください。