2015.02.06更新

犬の肺は左側が前葉前部、前葉後部、後葉。右側が前葉、中葉、後葉、副葉の全部で7つの葉からできています。肺に見られる病気はたくさんありますが代表的なものとして肺炎、肺腫瘍(肺ガン)、肺膿瘍、肺捻転などです。今回は胸水貯留が原因で肺葉捻転をおこしたワンちゃんの手術です。
 来院した際には努力性呼吸がみられました。レントゲン検査、超音波検査、血液検査などを行い胸水が貯留していることと、右側の肺中葉領域が空気を吸い込めていないことがわかりました。

さらに胸水の性状を調べたり、細胞をみる検査を行いました。その結果感染症や腫瘍性疾患の可能性は低いと考え肺葉捻転を疑いました。胸水が貯留していることで肺葉捻転が起こりやすく、また捻転をおこしていると胸水の原因になることがあります。今回どちらが先に存在したのかは不明でしたが含気していない肺を放っておくと細菌の温床となったり胸水の原因になりますので手術にて肺葉切除を行いました。

胸壁を切開しました


皮下織、筋肉を切開していくと胸膜が見えてきます。胸膜に穴を開けると肺が顔を出します。


肺が見えています。しかしこれは通常の肺の色ではありません。そして赤黒く変色した肺は胸壁や前後の肺葉に癒着していました。


癒着を丁寧に剥離しています。写真の赤黒くなった肺の左右に見えるのが正常な肺の色です。この時点で腫瘍の疑いがある場合には癒着を剥離せず前後の肺葉も同時に切除しなければなりませんが今回は肺葉捻転を疑っていますので丁寧に剥離し機能していない肺葉のみを切除します。


癒着の剥離を終え、肺の基部を結紮しています。


捻転肺葉を切除した後の状態です。きれいに切除することができました。


手術後はしばらく胸水が貯まりますのでカテーテルを設置し閉胸します。開胸手術は強い痛みが伴いますので手術前から手術後2〜3日は疼痛管理を徹底して行います。切除した肺の病理検査結果では腫瘍は検出されませんでした。


この後、このわんちゃんは呼吸状態も落ち着き1週後に退院しました。その後もゆっくりではありますが胸水貯留がみられました。食餌療法や内科治療を継続的に行い1〜2ヶ月ごとに胸水を抜去しています。胸水以外はとても元気で食欲旺盛で病気をしているとは思えないような状態です。
 こういった乳び胸などの原因不明の胸水に対し胸管結紮や心嚢膜切除をしたり、横隔膜に穴を開けて胸水をお腹の方へ誘導したりする手術を行うこともありますがいずれの方法あるいはすべてを行ったとしても胸水を制御できないことがあります。このワンちゃんの飼い主様は現状に大変満足されていますのでしばらくはこのままでいくことになりそうです。


ちなみにこれは上のわんちゃんと同じ右肺の中葉に発生した悪性腫瘍(肺がん)を手術している所です

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2015.01.31更新

犬の口の中にできる良性のできものなかで気をつけておかなければならないものに棘細胞性エナメル上皮腫というものがあります。棘細胞性エプリスと呼ばれることもあります。
良性のできものなので放っておけばいいと思われるかたもいらっしゃるかもしれませんがこの棘細胞性エナメル上皮腫はちょっと性格が悪いのです。
もちろん転移はしません。しかし局所の浸潤性が強く、骨を溶かしながらどんどん大きくなります。
そして口から外に大きくせり出し、ゴハンを食べにくくしたり、表面が崩れて感染を起こしたり、出血したりします。最悪の場合これが原因で命を失う恐れもあります。
ですのでこのできものは放っておいてはいけないのです。やはり取らなければいけないのです。さらに取り方が大事なのです。そこにあるできものをちょこんと切除しても再発する可能性が高いのです。浸潤性が強いため確実に取るには大きくマージンを取らなければなりません。最低限周囲の歯は抜歯しその部位の下顎骨を削らなければなりません。さらに確実な切除を目指すに下顎骨を部分的に切除しなければなりません。このことからこのできものは発見したら小さいうちに手術した方が手術侵襲が小さくて済みます。かなり大きくなってからだと下顎の骨を半分取らなければならないというような事態にもなり得ます。

このワンちゃんは下顎の先にできものがあるとのことで来院されました。ピンク色の歯茎が盛り上がっている場所が病変です。


上から見ると腫瘤は歯を圧排しているのがわかります。そしてレントゲン検査ではわずかに骨が溶けているのがわかりました。


見た目だけだと何の腫瘍なのかはわかりませんのでまず病理検査を行いました。エプリスなどの良性病変の可能性もあったため肉眼状見える病変はできるかぎり切除しました。
下の写真は組織生検を行ったあとの写真です。
 病理検査の結果は棘細胞性エナメル上皮腫でした。残念ながらこの棘細胞性エナメル上皮腫に対して肉眼状で取った程度ではほぼ確実に再発しますので1週間後に手術を行いました。


手術時の写真です。下顎の先端部分を片方の犬歯を含めて切除しました。


切除後の状態です。ここまでしっかりと切除しておけば安心です。



縫合後の様子です。離開しないようしっかりと工夫して縫合します。


手術後の病理検査では腫瘤はすべて取りきれているという結果でした。これで安心です。
 ここまでやらなくてもいいのでは思う方もいらっしゃると思いますが、中途半端に切除して再発した場合、また麻酔をかけて手術をしなければなりません。そして再手術時には今回の手術以上に切除範囲を広げなければなりません。結局のところ1回で確実に切除するということがワンちゃんにもとっても飼い主様にとっても1番やさしい治療になるのです。


投稿者: 制作

2015.01.31更新

副腎はお腹の腎臓の近くに左右それぞれ1個づつある臓器です。仕事としては主に糖質コルチコイドや電解質コルチコイドというステロイドホルモンを分泌しストレスから体を守ったり、体の中の塩分やカリウムを調節しています。さらにアドレナリンや性ホルモンも分泌します。

通常、犬の副腎は左はピーナッツ、右は矢の先っぽのような形をしており、それぞれの厚みがだいたい6ミリを超えないと言われています(犬の大きさにより範囲は異なります)。

副腎の形や大きさに異常が見られる場合には何らかの病気があると考えられます。その異常として代表的な物に副腎の腫瘍があります。その腫瘍が機能的で過剰に上記のホルモンを分泌している場合には何らかの臨床症状を示している場合がみられます。たとえば糖質コルチコイドが過剰に分泌されると多飲多尿や多食、脱毛、ビールっ腹(coldsweats01腹筋が少なくなり、腹腔内の脂肪が増えますのでぽっこりとおなかが出ます)、呼吸筋も減りビールっ腹も手伝って呼吸がしづらくなりますので呼吸が早くなったり・・・といろいろな症状が見られます。ただしアドレナリンが過剰分泌される褐色細胞腫で見られる頻脈や不整脈、高血圧などの症状は普段気付きにくく、不整脈で虚脱を繰り返して発見される場合もあります。
 さらに厄介なのは非機能型の場合です。このばあい副腎のサイズは正常範囲を超えているがホルモンの過剰産生は起こらず臨床症状は認められません。この場合には慎重な経過観察が必要です。

一般的に大きさが2㎝超えると悪性腫瘍である確率が高くなるとされています。さらに形や内部構造の異常、多臓器への転移の有無などを慎重に検査し治療の判断をすることが大事です。


このワンちゃんは副腎が5センチを超えておりましたが、ホルモン検査では何度検査しても過剰分泌があるのかないのか微妙な範囲でした。非機能型の可能性もあり定期的に検査を繰り返し経過を追っていました。その結果徐々に大きさが増し6センチを超えてきましたので悪性腫瘍の可能性も否定できないと判断し手術にて切除しました。

赤い肝臓の右側にある丸いものが腫大した副腎です


副腎はとても血管に富んだ臓器ですので出血が起こりやすく慎重な操作が必要です。大出血に備え後大静脈に臍帯テープをかけておきます。


少しづつ周囲を剥離していきます


後大静脈という大きな血管にべったりくっついていますのでゆっくりと剥離します。


切除したところです


病理検査では「副腎腺癌」という悪性腫瘍でした。腫瘍も取りきれているという結果で一安心です。
現在手術から3年経過しておりますが再発無く元気に過ごしております。


副腎腫瘍の治療は第一に外科的切除です。しかし血管が豊富でさらに手術操作のしにくい位置に存在していることで難易度は高いとされています。ただし手術後2週間を乗り切ればその後の予後はおおむね良好とされています。手術をするかしないかの判断はとても難しいのです。しかし症状がある場合には積極的に治療をすることで多くの場合その後の生活の質が向上します。反対に判断に迷い手術の機会を失った場合には最悪の結果を招いてしまうことがありますので注意が必要です。

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2015.01.22更新

仔猫の大腿骨骨折は割とよく見られる骨折です。若いときの骨折は比較的早く治癒しますので骨にひびが入った時や骨折した部位の骨と骨が割と近くにあり、治癒したあとの生活に支障がないような骨折は手術せずに治るのを待ったりすることもあります。しかし骨の変位が重度である場合には手術で整復した方がいいでしょう。

子猫の太ももの骨の骨折です。




仔猫の骨折では複雑骨折などではないかぎり最小限の固定で十分です。
大腿骨にピンを通します。手術直後のレントゲン写真です




一ヶ月後の状態です。骨折部位が日常生活に十分耐えられるようになりましたのでピンを抜きました。




ピンを抜いたあとの写真です。キレイに骨がついてますね。足の長さも左右変わりませんね。




骨折をなおす時は骨が自分の力でくっつこうとするのを邪魔しないように、最小限の侵襲で治療することが重要です。とくに若い時はすぐに骨はくっついてしまいますので手術侵襲を最小限にすることを常に心がけております。


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2015.01.10更新

鼠径ヘルニアとはお腹の中の腸や膀胱、子宮などの臓器や脂肪組織が鼠径部にある鼠径管から出てしまっている状態です。でている穴の部分をヘルニア孔といいます。

飼い主が気付く症状として柔らかいできものが後ろ足の付け根の内側にぽこっと出ている状態です。

先天性のこともありますし、事故などでお腹に強い力がかかったりすることで後天的に起こることもあります。ちなみにワンワンと吠えることが多いワンちゃんに多い印象がありますので興奮しやすいわんちゃんは起こりやすいのかもしれません。

はじめ痛みを伴うことはありませんし、ほとんどなんの症状も示しません。しかし何かのきっかけでさらに脱出している臓器が増え、ヘルニア孔がキツくなり、血流がうっ滯したりすると痛みが発生し嘔吐や元気が無くなるなどの症状があらわれます。その状態を放っておくと脱出している臓器が壊死したり、腸閉塞が起こったりして命に関わる事態になります。鼠径ヘルニアは安易に放置せず積極的に手術で整復した方がよいのです。

このワンちゃんは通常の鼠径ヘルニアです。鼠径部に鶏卵大のブヨブヨができたとのことで来院されました。すでに麻酔がかかっており仰向けの状態でヘルニア内容物がお腹の中へ戻ってしまっているので腫れはわずかにしかみられません。


皮膚を切開し周囲の組織を剥離していきます


指で示しているのがヘルニア孔から脱出している腹腔内の脂肪です


ヘルニア内容物を腹腔内にもどしたあとのヘルニア嚢(この場合は鞘状突起)です


軽くお腹を圧迫すると再度ヘルニア嚢内に脂肪が脱出してきます


ヘルニアをすべて腹腔内に環納したところです

ヘルニア孔に指は小指が入るくらいの大きさでした


ヘルニア孔を塞ぐため糸を周囲にかけています


縫合が終了したところです鼠径輪の尾側は後肢にいく重要な血管や神経がでているため完全には閉じません



皮膚の縫合を終えたところです



もう一例
このワンちゃんは以前から鼠径ヘルニアがあったものの、手術は避けたいとのことで経過をみていました。しかし数日前からヘルニア部分の腫脹が大きくなり元気食欲も無くなってきたとのことで来院されました。痛みが強く、嘔吐がみられたため緊急手術を行いました。


ヘルニア内容物はうっ血し赤黒い色を呈していました。


開腹して内側から内容物を調べると腸管が入っているのがわかりました。



ヘルニア嚢を破くと変色した腸と脂肪がみられました


腸管の一部と脂肪は壊死していました。この部位は回復できませんので切除することにしました


腸管を切除しているところです


腸の切り取った端と端を縫合したところです


皮膚を縫合し、終了したところです



鼠径ヘルニアではありませんがもう一例
他院にてヘルニアを手術したがまたその部位が腫れてきたとのことで来院されました。
前回の手術時の術創が下に見えます。癒着があると想定し正中を切開しました。この方が解剖学的な位置も把握しやすくなります。


ヘルニア孔と前回の手術時の縫合糸が見えます。縫合糸は腹壁からは遊離しており無意味な状態になっています


脱出していた脂肪組織です。よく探索してみると鼠径ヘルニアではなく大腿ヘルニア(大腿管の欠損部を通じて脱出している状態)でした。個人的に鼠径ヘルニアよりも整復は難しいと考えています。


組織を丁寧に剥離し、位置関係を見ます。


縫合糸をかけています。鼠径ヘルニアのように強い靭帯が無いので血管や神経を避けながらなるべく強度が強い組織にかけていきます


縫合を終えたところです



皮膚の縫合を終えたところです



このワンちゃんも大腿ヘルニアです。しかも再発したとのことで来院されました。
ヘルニア内容物はうっ血により変色しています



再発症例ですので去勢手術を行い精巣を包んでいる丈夫な膜をヘルニア孔の閉鎖に使用しました。


丈夫な鞘膜によりヘルニアを整復したところです。精巣鞘膜を利用する以外にポリプロピレンメッシュをいう人工材料で塞ぐこともできますが、今回の症例はダックスフントであったため、異物に対する組織反応が強く起こる可能性を考慮し人工材料の使用は避けました。




次のワンちゃんは鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアが両側にみられました。犬種はダックスです。




ヘルニア周囲を丁寧に剥離し探索すると恥骨前腱も一部断裂していました。


ヘルニア内容物は腹腔内の脂肪でした。


ヘルニア内容物を切除し、閉鎖したところです。これだけでは強度に不安がありますので同時に去勢手術を行い鞘膜を使い補強しました。


鞘膜を縫合しているところです


広範囲に渡りヘルニア孔が形成されていますのでしっかりと縫合していきます


反対側の状況も同様です。こちらも鞘膜により閉鎖しました。









ちなみにこちらはおへそのヘルニアです。臍ヘルニアといいます。これも放っておくと腸管などが脱出する可能性がありますので可能な限り手術で治した方がいいです。


ヘルニア孔から脱出していた脂肪組織。

腹腔内の脂肪とつながっているのがわかります。


ちなみにこれは鼠径ヘルニアではなく、皮下にある潜在精巣が腫瘍化し大きくなってしまった様子です。とてもにていますが間違えないように気をつけましょう。




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2014.12.20更新

胸腔内にできる腫瘍はたくさんの種類があります。肺にできる肺がんや心臓にできる血管肉腫やケモデクトーマ、さらに前胸部にできる胸腺腫やリンパ腫や異所性甲状腺癌、胸壁や胸膜にできる悪性中皮腫などなどです。
腫瘍の種類やできる場所によって様々な症状を示します。その代表的なものが胸水貯留です。腫瘍があることで起こる炎症により滲出液や変性漏出液が貯留したり、腫瘍がリンパ管を圧迫して乳びと呼ばれる乳白色の液体が貯留したりします。

今回、ご紹介するワンちゃんは数日前に突然元気がなくなり、その二日後には呼吸困難となり動物病院に駆け込んだとのことです。胸水が貯留しておりそれを抜くことで一命は取り留めました。その胸水の原因を精査することと治療を希望され当院に転院されました。

レントゲン写真では胸水の貯留が認められ、さらに前胸部を占拠しているX線不透過性の物体があるということがわかりました。そのほかに超音波検査や細胞診検査などを行いましたが、前胸部の占拠物がなんであるか、はっきりとはわかりませんでした。本来であればこの時点でCT検査を行うことでさらなる診断の手がかりを得られる可能性があります。しかし胸水の貯まるスピードが非常に早いのに加え、前院で麻酔下で設置した胸腔チューブがすでに詰まっており、まったく胸水が抜けない状態でした。局所麻酔下での胸腔穿刺では胸水内のフィブリンの塊がすぐに針先詰まってしまいほんの一部しか抜けないという状態でしたので早い段階で開胸手術を行い、病変がなんであるのかを確認し、可能であれば治療を行い、同時に胸腔チューブを再設置することを決めました。この時点では胸腺腫、肺腫瘍、肺捻転などを想定して手術に入りました。

手術前のレントゲン写真です




開胸したところです。肺が見えています


前胸部を見ると20㎝大の腫瘤が確認できました。あまりに巨大であるため最大限肋骨の間を切開し周囲との癒着を結紮離断していきました。腫瘤周囲全体の癒着を処理するのにかなり苦労しましたがなんとか切除することができました。


切除した腫瘍です。非常に固くて巨大な腫瘍でした。


切除したあとの前胸部の様子です。薄い膜のむこうに反対側の肺が見えます


無事に腫瘍切除を終え閉胸しているところです


胸壁を縫合しているところです


手術終了時の写真です。巨大な腫瘍を取り出すため切開がかなり大きくなっています。そして胸水を抜くためのカテーテルを設置しました。




この非常に大きな腫瘍がリンパ管等を圧迫し、胸水が貯留していたと考えます


手術後3日目のレントゲン写真です。手術後は思ったよりも胸水貯留が軽減しませんでした。術後7日あたりまでは毎日700mlほど胸水を抜き続けました。




その後低脂肪食や利尿剤などで治療し、術後1ヶ月の時点では胸水はほとんど見られず、良好に経過しました。現在徐々に利尿剤を減量しておりますが、胸水の貯留は認められません。とても元気に走り回っており、飼い主様も若い時に戻ったみたいだと喜んでおられました。


病理検査ではThymofibrolipomaという非常に珍しいタイプの腫瘍でした。腫瘍は取りきれているので予後は良好と考えられるが稀な病変のため慎重な経過観察が必要とのことでした。
8歳ですからまだまだ頑張れそうですね。





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2014.12.15更新

犬のアキレス腱の断裂はそんなに多くはみられない疾患です。断裂した場合には手術で治療しなければ機能回復は望めません。
今回ご紹介するワンちゃんは毛をカットしていた際にアキレス腱を一緒に切ってしまったとのことで来院されました。来院された時には患肢は完全に挙上していました。一般的に急性断裂の場合は挙上し、負重しません。

レントゲン検査では足根関節が不自然に屈曲します。通常膝を伸ばした状態では足根関節も同時に伸びます。


正常肢では膝を伸ばした状態では足根関節を屈曲させようとしても曲がりません。


手術前の様子です。足根関節が不自然に屈曲しています。


切断されたアキレス腱をピンセットで示しています


bunnell-meyer縫合法という特殊な縫合方法でアキレス腱をつなげています。


 縫合が終了したところです




手術後の状態です。膝が伸びている状態では足根関節を曲げようとしても抵抗があります。

1〜2ヶ月は足根関節を創外固定やキャスティングで固定します。


固定を外したときの様子です。この時には通常の歩行ができるようになっていました。


アキレス腱断裂ははじめにも書いた通り、手術をしなければ機能を回復することはできません。ゆえに正しく診断した上で可能であれば手術をすることが重要です。手術後も固定しなければならない期間がありますので治るまでに飼い主様の努力も必要になります。


西調布犬猫クリニック


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2014.11.27更新

猫さんの口の中にはいろいろな腫瘍が発生します。今回は猫さんの口腔内にできた線維肉腫の例です。
今回の猫さんは健診ということで当院に初めて来院された時に口の中にある腫瘍を発見しました。飼い主様はとてもショックでどうするか悩んでおられましたが、何かしてあげたいというお気持ちが強く、最終的に手術による切除を選択されました。ちなみに口の中にできる線維肉腫は扁平上皮癌と同様に局所浸潤性が強く骨の中にもぐんぐん浸潤していきます。そして皮膚を突き破って外側にせり出してきたり、口の内側に大きくなっていき食事をとることができなくなったり、腫瘍自体を噛んでしまい出血や感染を起こしたりします。治療は外科切除、放射線治療、抗がん剤などがありますが根治は困難なことがほとんどです。

今回の猫さんの飼い主様は根治は難しいと思うが少しでも長く本人が快適に過ごせるようにしてあげたいとの思いから外科切除を選択されました。

私としてもその思いを尊重しできるだけ局所再発をおさえるべく広範囲の切除を実施いたしました。

これは組織生検時の写真です。粘膜が潰瘍化しています


出血している部位は生検した部位です。腫瘍は口唇粘膜に大きく広がっています


手術時の写真です。鉗子は腫瘍の上側の境界を示しています。


切除する粘膜に支持糸をかけています。


腫瘍から約1㎝のマージンをとり、切開しています。マージンは広ければ広いだけいいのですが顔の小さい猫さんではとれる範囲もかなり制限されますので1センチが限界でした。


切開を進めていきます。この時腫瘍の表面を正常な組織で包まれている状態で切除するようにします。


腫瘍を切除したところです。頬骨も部分的に一塊で切除しています。内側は歯列を超えて上顎骨まで切除しています。


切除後の写真です。肉眼上ですべての腫瘍を切除しました。


鉗子の先には腫大したリンパ節があります。術前にこのリンパ節にがん細胞が存在することがわかっていますのでこれも同時に切除します。


そして再建します。これだけ切除したあとの口腔内の再建は非常に難しく苦労します。皮膚は頸部から皮弁法で転植しました。


術後しばらくは摂食が難しくなることが予想できましたので、胃瘻チューブを設置しました。


切除した腫瘍です。


手術後の写真です。術後数日間は徹底的に疼痛管理をし、猫さんの苦痛をやわらげます。
下あごについているチューブは排液を促すためのものです


入院中の様子です。


手術後1ヶ月くらいの写真です。抜糸も終わり、毛もだいぶ生えそろっています。着ている洋服は胃瘻チューブをおさめておくためのものです。


皮膚もキレイになっています


口の中の様子です。縫合した糸にゴハンがついていますが良好な状態です。この時には自分の口からも食事をしています。


これは手術後2ヶ月くらいの写真です。口の中はほぼきれいな状態です。わずかに残っている糸はしばらくするととれてなくなっていきます。


外貌に関しては毛の走行が違うのでおひげのようになっていますが飼い主様は非常に満足されていました。





その後の様子ですが、半年経った現在もとても元気に過ごしています。
しかし残念ながら再発を起こしてしまいました。口腔内にではなく外側に再発がみられます。半年して再発してしまったことを考えると果たして手術したことが良かったのかと考えてしまいますが、飼い主様は「手術しなければ今頃生きていないと思うし、全然痛みもなく元気そうな様子をみていると手術してよかったと思う」と仰られています。ちなみに今回の写真は猫さんのお顔がそのまま出てしまっていますが、これは飼い主様から「手術前は腫瘍を大きく切除してしまうことで顔がどんな風になってしまうのか不安だった。だから手術した後の写真も含めてホームページに載せて、同じように悩んでいる方に参考にして欲しい」とのお言葉をいただきましたのでそのままにしてあります。

猫の口腔内の扁平上皮癌や線維肉腫は本当に厄介な腫瘍で初期の段階で大きく切除できれば根治の可能性もありますが、進行した状態では手術しても再発することが多くあります。では手術する意味があるのかというとこれはいろいろな考え方があるので答えを出すことはできません。
 私の考えとしてはまず痛みを制御するということがあります。骨が腫瘍によって溶かされる痛みというのは想像を絶すると言われています。例えると骨に釘が刺さっていて、その釘を動かされているときと同じくらいの痛みだそうです。猫さんはポーカーフェイスですのでこの痛みをじっと耐えていると考えます。その痛みから解放できると考えれば手術にも意味があると考えます。
 次に出血や感染を防ぐという意味もあります。口の中の腫瘍が大きくなると腫瘍表面は脆弱になり、食餌中に歯に当たったりして出血を起こします。腫瘍を患っていると血が止まりにくくなることがありますので常に血が滴るようになることもあります。さらに口腔内は細菌が多く、その細菌が自壊した部位に感染を起こすと化膿してしまいます。血や膿が口から溢れてくる・・・自分の口の中がそうなったときのことを想像するだけで倒れてしまいそうになりますね・・・。
 つまり、このような腫瘍は遠隔転移を起こしにくく、局所の状態がどんどん悪化していき、それによって弱っていって最後を迎えるということがほとんどだと思います。このことから局所を制御することにより上記のような状態を回避できる可能性があるならば手術をする意味というのは十分あるのではないかと考えます。


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2014.09.25更新

中型犬の前腕骨折

骨折整復には外固定やピン、ワイヤー、プレート、ラグスクリューなどを使用した内固定があります。
その他に創外固定という方法もありますが開放性骨折や整復が困難な骨折に使用されることが多く、選択される機会は限られています。

今回のワンちゃんの骨折は前腕の2本の骨が折れています。今回使用したのはプレートによる整復です。プレートによる固定は強固で整復後早い時期から患肢を使用できるのが特徴です。


骨折時のレントゲン写真です
 
まず骨折部位の上を切皮します

筋肉の間を分離していき、骨折部位を確認します。


プレートにより骨折を整復したところです

とう骨整復後、尺骨が正しい位置にあるかを確認します。体重が重い場合には尺骨も髄内ピンやプレートにて整復が必要なこともあります

皮下織を縫い終わったところです

皮膚を縫合し、手術が終了したところです。


整復後のレントゲン写真です。2本の骨があるべき位置に整復されているのがわかります。
 

だいたい、3ヶ月から半年で骨折が治癒し、必要であればプレートを除去します。


投稿者: 制作

2014.09.06更新


こんにちはsign01happy01

段々と暑さが和らいできて、
お散歩もしやすくなってきましたねsundog


先日、
ポメラニアンのラウラちゃんが
シャンプーに来てくれましたspacatface


とても毛並みが綺麗なワンちゃんですshineshinehappy02




シャンプーをしてさらにふんわり感が増しましたnotelovely








ラウラちゃん『気持ち良かったぁ〜〜heart04shine


とってもお利口さんでしたhappy01note

また来てね〜smile







投稿者: 制作

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