2013.08.31更新

猫の口にできる腫瘍で一番多いのは扁平上皮癌で、次が線維肉腫です。どちらも遠隔転移率は低いですが局所での侵襲が強く、大きくなってゴハンを食べれなくなったり、腫瘍表面が自壊し感染を起こしたり、骨に浸潤し強い痛みの原因となり急速に衰弱していく。特に扁平上皮癌の舌の裏にできるものや潰瘍を形成するタイプでは治療が困難になることが多い。

今回ご紹介するのは猫の口にできた唾液腺癌です。16歳半で腎臓が少し悪い以外は元気なネコちゃんです。「腫瘍が大きくなってきてみていられなくなった」とのことで来院されました。高齢ではありましたが、このままにしておけば腫瘍がさらに増大し、衰弱していってしまうのは明らかでした。幸い全身状態はいい状態でしたので手術を実施しました。

腫瘍は歯茎の内側から外側、さらに口唇にまで浸潤しています。
  



口唇にまで浸潤していますので口唇含め皮膚を大きく切皮し、皮下組織を剥離していきます。
  

腫瘍からなるべく離れた位置でアゴの骨を切り腫瘍ごと切除します。
  
皮膚を縫合して終了です。病理検査の結果では腫瘍は取りきれているという判断でした。
 

手術後3週目の写真です。少しヨダレで汚れていますが、許容できる範囲です。
  

下あごは切除した側に少し傾きますがゴハンもふつうに食べれますし、外観もそんなに変化はありません
  


このねこちゃんは16歳半と高齢でしたが手術後も元気でゴハンもたくさん食べれるようになりました。このあと1年以上して他の病気で来院された際にも腫瘍の再発や転移は認められませんでした。

すべての病気に共通することですが早期発見早期治療がいいことは言うまでもありません。しかしある程度ガンが進んでしまった状況でも「ガンだからもうだめだ」とあきらめてしまうのはすこしもったいないという思いがあります。ガンの性格を知った上で適切な治療ができればこのネコちゃんのように救われる命もたくさんあります。加えて、治せる可能性のある病気を「かわいそうだから」という理由だけで手術をしないのも少し考えていただきたいところです。飼い主様それぞれのお考えはあるとは思いますが、もし自分の立場ならどうか。病気を放っておくのか、手術するのか、しないのか、しない場合その病気とともに生活していけるのか?よく考えて結論を出していただければと思います。治らない病気を無理に手術しろと言っているわけではありません。治る可能性のある病気をそんなにも簡単にあきらめないで欲しいということです。

東京都調布市 
西調布犬猫クリニック

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投稿者: 制作