2016.05.11更新

ネコさんの大腿骨(ふともも)の骨の骨折です。
骨折の治療法はたくさんあります。どういった方法で治すかは難しいところです。
まず一番に考えなくてはいけないことは骨になるべく触らないで治せないかと言うことです。
骨折の手術の際に骨をたくさん触ると体が骨折を治そうとしているのにそれを邪魔してしまうことがあるのです。もちろん折れた骨同士のズレが大きければズレを治さなければ骨がとんでもない形でくっついてしまったり、くっつかないことも多々あります。ゆえにまったく触らないことは困難なのでなるべく触らないように治すことができれば体が治そうとしているのを邪魔せずに治すことができます。
具体的にどうすればいいのか?それがとっても難しいのです。まず骨へ十分に血液が流れていくことが重要です。そのためになるべく骨から筋肉を剥がさないようにするのです。必要最低限にとどめるということがとっても重要です。ではどういった固定方法がいいのか?一番は骨折のズレを治してギプスで固めてしまう方法です。しかし動物ではギプスで治すと言うことは現実的にはほぼ不可能です。数ヶ月間安静にできませんし、ギプスを必死で取ろうとしますから。





























投稿者: 制作

2016.04.22更新

最近、会陰ヘルニアの手術をする機会が多いなあと個人的に感じているのですが、その理由がなぜなのかはわかりません。気のせいかな?

とにもかくにも会陰ヘルニアは非常に厄介な病気です。肛門の周囲の会陰部の筋肉がペラペラに萎縮してしまい、そこから骨盤腔内の臓器が脱出してしまいます。膀胱や前立腺、結腸や小腸、腹腔内の脂肪などが出てきます。膀胱が出てきた場合には排尿困難になることもあります。さらに直腸を支える筋肉がなくなるため直腸が拡張してしまい、排便困難にもなっていきます。
 筋肉が萎縮してしまう原因は男性ホルモンが一因とされ治療には去勢手術が必須です。しかし去勢手術だけでは治癒しません。会陰部の筋肉間に大きなすき間ができてしまっているのでそこをどうにかこうにか埋めていかなければなりません。そしてヘルニアの部分に脱出している臓器が多ければ多い程、その臓器が脱出するのを防ぐために開腹して膀胱や前立腺、結腸を腹壁に固定します。これだけやれば治るのかというとまた難しいところで、会陰ヘルニアになった原因があればそれを治療しなければならないのです。膀胱結石や前立腺炎、前立腺膿瘍などがないか腸や他の臓器に問題がないか直腸周囲や会陰部に問題がないかなどを調べ原因がわかればそれを治療します。そして手術後も排便を楽にするために便の軟化剤を内服したり、ウンチが少なくなる療法食を与えるなど継続的に治療が必要になります。

今回手術したわんちゃんの例はとても治療を迷いました。
2年前くらいからたまに突然息みだし、腹痛に襲われるようになりました。長いと30分以上息んでいることもあったそうです。そしてその症状は数週間でないこともあり、忘れた頃にまた起きるということをくりかえしていました。症状は徐々に悪くなっていき今度は便が出にくくなっていきました。それと同時に会陰ヘルニアを発症してしまいました。このワンちゃんの場合は会陰ヘルニアになった原因はこの突然起こる息みが原因なのでそれをなおさない限りはまた再発してしまうと考え、全身を精査しましたが、特に異常はありませんでした。このワンちゃんはこの息みが始まる半年以上前に鳥の骨を大量に食べてしまったことがあり、そのときに噛み砕かれた骨が固まり直腸で停滞し排便困難になったことがありました。骨の尖った部位が直腸粘膜に引っ掛かりびくともしませんでしたが骨の固まりを指で砕きながらやさしくかき出すことでなんとかなりました。それからしばらくはなんともありませんでしたが半年以上経って息むようになりました。おそらくその時の排便困難で結腸、直腸や膀胱、前立腺などが尾側へ変位し神経も引き延ばされ腸の働きが障害されたり、膀胱や前立腺が変位することで尿道が折れ曲がるなどしてしてしまったのではないかとかんがえました。検査上は膀胱や前立腺の変位は大きくなかったのですが開腹して膀胱前立腺固定、結腸固定を行うことにしました。

手術前のレントゲン写真です。直腸内に糞塊が認められ、肛門の位置が尾側に変位しています。



手術前の毛刈りを行ったところです。直腸内に指を入れると直腸の拡張が重度に認められました。


まずは去勢手術を行いました。去勢後に睾丸を包んでいる丈夫な膜を使用してヘルニアを塞ぐこともあるますが、今回はポリプロピレンメッシュを使用する方法で行いましたので通常の去勢手術を行いました。


陰茎の横を開腹し、結腸や膀胱にアプローチします。


直腸に縫合糸を通し、腹壁に固定しています


結腸を腹壁に固定することで蛇行している直腸がまっすぐにのびるのを助けます。そして息んでも尾側に変位することを防ぎます。



次に去勢後不要になった精管を腹壁に固定します。これにより膀胱や前立腺が尾側に変位することを防ぎます。


お腹を閉じています。腹筋を縫合する時に膀胱を頭側に軽く引きながら一緒に縫合します。これで去勢手術と膀胱・前立腺固定、結腸固定が終わりました。


つぎに会陰ヘルニアの整復にとりかかります。見えているのは肛門です。しっぽは下に位置しています。以前はお腹の手術が終わったら、次に腹這いにして手術をしていましたが、学会で大学の先生が仰向けのまま手術していると言っていたので、その通りやってみたところこの方が時間短縮になるのでいいなと感じ、そのようにしています(スタンダードは腹這いです)。


肛門の脇を切開するとヘルニア部位に液体が貯留しています。液体を排除し、ヘルニア部の構造を確認します。


ヘルニア孔に設置するポリプロピレンメッシュで筒をつくり、挿入します。


次にメッシュを内閉鎖筋、仙結節靭帯、尾骨筋、肛門括約筋に縫合していきます。これらの筋肉や靭帯に確実に針を通さないと再発の可能性が高くなりますので一番神経を使うところです。縫合する糸もポリプロピレンの糸を使います。ポリプロピレンは生体との相性がよく丈夫で体の中に残しておいても問題が起きにくいのです。人の鼠径ヘルニア等の手術にも用いられています。

 
縫合し終えるとこんな感じになります。


さらにメッシュ同士を縫合し、肛門を頭側に引っ張るようにします。
その後、皮下織を縫合します。


皮膚を縫合します。


次に反対側も同様の手術を行います。


両側の会陰ヘルニアの整復が終了しました。なんとなくお尻周りがすっきりしましたね。



手術から2週後の抜糸時の様子です。経過は非常に良好です



肛門の位置が元の位置にもどっています。


現在、痛みで息むことも無く、踏ん張ってもほんのわずかしか出なかった便もブリブリ出ているとのことです。そしておしっこがじゃあじゃあ出るようになったのことです。飼い主様のお話では「手術前もおしっこは出ていたが勢いがぜんぜんなかった。それが普通だと思っていた。こんなに音がするくらい出るようになったので以前は出にくかったのだとわかった」とのこと。レントゲン写真の所見やエコー検査でも膀胱の変位がそんなになかったので尿道は普通に開通していると考えていたのですが尿道が絞扼されていたのだと考えます。なんにしても症状が落ち着いてくれたのでよかったです。
とにかく会陰ヘルニアは厄介です。

投稿者: 制作

2016.03.07更新



こんにちはtulip

3月に入りだんだん暖かくなってきましたねsuncatface
暖かくなる一方花粉の飛散も増えてきて、花粉症の方にとっては辛い季節ですねcrying

フィラリアやノミ・ダニの予防シーズンも始まりますので、
しっかり予防しましょうnotedog



さて、今回はトリミングに来てくれました
ポメラニアンとチワワのMixであるリンちゃんをご紹介しますhappy01

リンちゃんは当院では初めてのトリミングでした〜spa


シャンプー中spa気持ち良さそうcatface




お風呂でさっぱりしたリンちゃんshineshine
ドライヤーに怖がらずお利口にしてますhappy01good




今回は柴犬カットで全身短くカットしました〜hairsalonshine
最近、チワワとポメラニアンのワンちゃんで人気のスタイルですねhappy02

リンちゃん初めてでしたがとてもお利口さんでしたheart04smile
またのお越しをお待ちしておりますwink

トリミング・シャンプーのご予約はお早めにどうぞ!
受付、お電話(042-444-1231)で承ります。

投稿者: 制作

2016.02.12更新

膝蓋骨内包脱臼は小型犬に非常に多く、特にチワワ、ヨークシャーテリア、トイプードル、パピヨンなどに多くみられます。膝蓋骨という膝のお皿が内側にゴリッと外れてしまうことで痛みがあります。そしてグレードが軽いものでははずれたお皿がまたもとの位置にゴリッと戻ります。このはずれたり、戻ったりを繰り返すと膝蓋骨が乗っているレールの部分が削られていきます。これが原因で慢性関節炎になっていきます。さらにお皿がはずれている時間が長くなってくるとスネの骨が内向きになっていきます。このことにより膝の中の靭帯に負荷がかかり、十字靭帯損傷などに発展することがあります。さらに半月板も痛めてしまうこともあります。グレード1で本当にたまにはずれるくらいであれば経過観察でいいと思います。しかししょっちゅうはずれて痛みを呈する場合には、たとえグレード1でも手術で治した方がいいとおもいます。手術しなくても普通に歩いてるから大丈夫という考え方もありますが、想像してみてください。膝のお皿が歩いていて突然ゴリッとはずれたら・・・。歩くのが不安になりますよね。しかも関節炎が徐々に進行していくということは慢性的な痛みを抱えながら生きていくことになります。人間は2本足なのでおそらく歩けなくなってしまうでしょう。犬は4本足なので他の足に重心を分散させれば歩くことはできると思います。だからといって歩ける=不安を感じていない、痛くないとは違うと思います。痛そうな表情をみせないし、普通に歩けているからといって何も感じていないのではないのです。先日も膝蓋骨脱臼のチワワさんが来院されました。6歳でしたが1歳になる前には膝蓋骨脱臼があると指摘されていたそうです。最近寝ていて起き上がった時に3・4歩びっこをひくようになったということです。膝を触診すると屈伸時に軋むような感触がありました。やはり慢性関節炎により痛みが出てきている状態です。こういったわんちゃん達をみているとグレードが低いからといって安易に様子を見ていきましょうというのはどうなのだろうと考えてしまいますね。



1歳のチワワさんの膝蓋骨脱臼の手術です。グレードは2です。最近足をあげることが増えてきたということで手術することになりました。


皮膚を切開します


膝関節の内部を露出したところです。膝蓋骨が上下に滑るレールの溝を深くします。


溝を深くする方法はいろいろあります。今回は楔形に切り出し、深化する方法で行いました。
レールを切り出したところです。


軟骨を切り出した後にさらに深く切り込みを入れ、そこに最初に切り出した軟骨部分をもどします。
そうするとレールが深くなり膝蓋骨がはずれにくくなります。レールの水平面で見た写真です。


深化したレールを正面からみた所です。


そして次にスネの骨の膝蓋靭帯がついているところの骨に少し切れ目を入れます。


そして切れ目を入れた部位の浮いた骨を少しだけ外側にずらします。


ずらした骨を固定するために細い金属のピンを骨に差し込みます。この脛骨粗面をずらすことによって膝蓋骨が内側に引っ張られる力を弱くすることができます。


次に、膝の外側の伸びてしまった筋膜、靭帯をカットし縫縮します。これによりさらに膝蓋骨が安定します。


関節を閉じます。



皮下組織を縫合します。


皮膚を縫合して終了です。

患部の腫れを防ぐため、包帯を巻いて3日〜7日の入院したのち退院します。

この手術によって膝蓋骨がゴリッとはずれることから解放され、慢性的な痛みを呈するようになるのを防ぐことができます。

投稿者: 制作

2016.02.11更新

犬の会陰ヘルニアは高齢犬でよく見られる疾患です。日本では特にダックスやコーギーに多くみられます。
会陰部と言われる直腸の脇の部分の筋肉が萎縮し、腹腔内の膀胱や前立腺、直腸やその周囲の脂肪などの臓器が逸脱してしまう病気です。男性ホルモンが原因の1つと考えられていますので予防には去勢が有効とされています。しかし去勢していても罹患することもありますので他にも原因があると考えられます。コーギーのようにしっぽがほとんど無かったり、短かったりするとお尻の周りの筋肉が発達しにくく罹患しやすいなんてことも言われています。他にも吠え癖がありお腹に力が入りやすいコも要注意です。さらには尿路系疾患や前立腺疾患、大腸疾患があり排便排尿時に時間がかかるコなども罹患しやすいと思います。臓器が逸脱してくる部分の穴をヘルニア孔といいますがこのヘルニア孔から膀胱や小腸が逸脱した場合に排尿障害や小腸の機械的イレウスを起こすことがあり、緊急疾患として扱われます。会陰ヘルニアに罹患すると直腸が拡張したり、蛇行したりすることで排便障害も起こります。排便時に踏ん張ってもなかなかウンチが出てきませんので酷い場合には飼い主が直腸の両脇を軽く圧迫して排便を補助しなければなりません。この期間が長く続くと直腸は脆弱化し破裂することもあります。

下のワンちゃんは以前から会陰ヘルニアを罹患しておりました。そして今回軽度の椎間板ヘルニアを発症し内科的治療を行ったところ、数日後に尿が出ないということで緊急来院されました。排尿障害の原因は会陰部に膀胱が逸脱したことによるものでした。用手で膀胱を腹腔内に戻そうとしても膀胱がパンパンに張っており、まったく戻りませんでした。経皮的に会陰部の膀胱に注射針を刺し、尿を抜き取りました。そうすることで膀胱を腹腔内に戻すことができました。再発の危険性がありますので数日後手術を行いました。下の写真は手術前の状況です。肛門の両脇が腫大しているのがわかります。さらに直腸内に溜まった便が弛緩した肛門から見えます。




肛門の両脇を指で押すとヘルニア孔から逸脱している臓器を押し戻すことができます。


手術ですが、今回のように膀胱や前立腺が逸脱してくる場合には開腹し、前立腺や膀胱、結腸をお腹の筋肉の内側に縫い付けて固定します。そうすることでヘルニア孔からこれらの臓器が逸脱するのを防ぎます。写真は精管を腹壁に固定しているところです。


次に結腸を腹壁に縫い付けて固定します。

そして膀胱も腹壁に固定しお腹を閉じます。


お腹を閉じ終わったところです。


次に会陰部を切開し、ヘルニア孔を塞いでいきます。

指を入れている部位がヘルニア孔です。このとき固定に使用する。肛門挙筋、尾骨筋、外肛門括約筋、内閉鎖筋、仙結節靭帯を確認します。


坐骨から内閉鎖筋を丁寧に剥がしていきます。ここに糸をかけていきます。


ヘルニア孔を防ぐためのポリプロピレンメッシュです。固いタイプと柔らかいタイプがありますが、柔らかいタイプの方がより組織と馴染むので柔らかい方を使用しています。


そしてこのメッシュを先ほどの筋肉や靭帯に縫合していきます。上部は肛門挙筋、尾骨筋に、内側は外肛門括約筋に、外側は仙結節靭帯に、下部は先ほど剥がした内閉鎖筋に縫合します。全ての糸を確実に各筋肉、靭帯に通さなければなりません。


通した糸を結紮していきます。

さらに、メッシュを縫縮します。これによりさらにヘルニア孔を小さくします。


そして皮下組織を縫合し、皮膚を縫合します。


上記の操作を反体側にも行います。


手術後1ヶ月の状態です。このころには椎間板ヘルニアによる後肢の不全麻痺もよくなっており、元気にお散歩しているとのことです。


肛門の位置が正常な位置へ戻っているのがわかります。


膀胱、前立腺、直腸固定のために切開したお腹の傷もキレイになっています。


上が手術前の写真で、下が手術後の写真です。肛門の位置が正常な位置に戻り、肛門周囲の腫脹も改善しています。


正面からの写真です。上の手術前の写真は直腸内の便が弛緩した肛門からみえますが、下の手術後の写真ではかいぜんしています。


会陰ヘルニアは高齢犬に多く、手術をするか、しないかで非常に悩まれると思います。しかし排尿障害や小腸の機械的イレウス、直腸の脆弱化による破裂などにより命に関わる状態になることも多々あります。
手術ができる体力があるのであれば可能な限り積極的に治療を行うことをおすすめします。

ちなみに下の写真は他院にてヘルニアプレートというシリコン性のヘルニア治療用具で治療したあと、そのプレートが逸脱してきた例です。

私自身はヘルニアプレートを使用したことはありませんが、このヘルニアプレートは20年以上前から使用されているもので、これまでに多くのヘルニアを治してきた実績がある非常に優秀な道具だと思います。しかしそれぞれの体の大きさに適したものを使用しないとこのように逸脱してしまうと考えます。その意味ではポリプロピレンメッシュは犬の体の大きさに合わせてサイズを調整することができ、さらに生体との相性もよくほとんど異物反応を起こしません。現在私はこのメッシュによる方法と睾丸を包んでいる鞘膜を使用する方法を選択しています。どちらを行うかは患者の状態によって選択しています。会陰ヘルニアの治療法はほんとうにたくさんあります。どの治療法を選択したとしても再発してしまう可能性があります。それぞれの状態に合わせてどの方法が最適なのかを考えて行うことが重要です。

投稿者: 制作

2016.02.08更新

犬の軟部組織肉腫はここでも何度かご紹介しておりますが、再びご紹介したいと思います。

軟部組織肉腫に関しては以前説明したものを参考にして頂ければと思います。

簡単にまとめると、転移することはあまりないが局所浸潤性が強く、最初の手術でしっかりとれなければ再発の可能性が高い腫瘍です。

とにかく最初の手術で可能な限り腫瘍をバリアになるもので包みながら切除することが重要です。

しかしこの腫瘍は四肢にできることが多く、そこで問題になるのが切除した後の皮膚の縫合です。ただでさえ四肢は皮膚が少ないところです。体幹であればわりと皮膚が余っていますので大きく取っても皮膚は寄せて縫合できます。しかし前肢の肘より下はまず皮膚が寄りません。肘より上であれば皮弁法という皮膚を一部切り離さずに切り出した皮膚で覆うことも可能ですが肘より下はそれもできません。なかなか悩ましい腫瘍なのです。

今回ご紹介する犬は手根関節の裏にできた軟部組織肉腫の例です。ちなみに私の愛犬のポーさんです・・・。



手根関節の裏に位置しています。


最近のはなしでは水平方向は1㎝もあれば十分ということも言われておりますのでマージンはそのくらいとって切除しています。本来であればもう少しマージンを取った方がいいに決まっていますが実際のところはそうなると皮膚移植などが必要になり入院期間が長くなるし、皮膚が壊死する可能性もあるし・・・ということでまあそのくらいとなっているのです。もちろん体幹部の軟部組織肉腫は皮膚がたくさんあるところなのでそれなりに十分なマージンを取った方が安全です。


垂直方向のマージン、つまり腫瘍の底部に関してはやはりこの部位では多くとることはできません。1㎝深く切除すると歩けなくなってしまいます。そこで丈夫なバリアになりそうな膜を探します。この部位では筋肉の表面にある筋膜があります。この筋膜を慎重に筋肉からはがし、腫瘍が顔を出さないように筋膜で包みながら切除するのです。メスで細かく細かく剥がしていきます。


手根部はかなり入り組んでいますので腫瘍が深い部位に入り込んでいます。その部位も腫瘍が露出しないように筋膜を剥がしていきます。


なんとか筋膜が連続性を保った状態で切除できました。


腫瘍を切除した状態です。


もちろん皮膚はよせても届きません。


そこで皮膚を格子状に切開していきます。これにより皮膚を寄せることが可能になります。

縫合した状態です。このあと包帯を巻いて、2日おきに交換していきます。


切除した腫瘍の底部です。腫瘍を薄い筋膜が覆っています。病理検査の結果は腫瘍は取りきれているという判断でした。


手術後10日経過した時の状態です。


2週間後の状態です。


1ヶ月後の状態です。


軟部組織肉腫は転移率は低いのですが非常に厄介な腫瘍です。以前は多くの場合、断脚が選択されていました。それほど再発率が高く、再発後は再度手術しても腫瘍は残存してしまいますので、再発は時間の問題です。その後増大していき自壊し、出血、感染を起こし全身状態が悪化していき衰弱していきます。

下の写真は軟部組織肉腫が肘の外側にあり、肘の深部に浸潤しており断脚をするかそのままで経過を見ていくか非常に迷った例です。結局15歳という年齢と肥満のため(コーギーで肥満なので断脚後は歩行が困難と判断)断脚せずに経過を見ていきました。数ヶ月後、腫瘤が自壊し出血が止まらなくなりました。急速に貧血が進行し、Mohsクリームで出血をおさえる処置を繰り返しましたが結局最後は患部からの感染で全身状態が急激に悪化し亡くなってしまいました。状況から考えて断脚はした方がよかったとは思いませんが、軟部組織肉腫が直接死因になってしまったのを目の当たりにして、やはり恐ろしい腫瘍だなと再確認しました。


Mohsクリーム処置後。この処置を繰り返し出血をある程度コントロールしていたが・・・。


長々と書いてきましたが、やはり全ての腫瘍で言えることは早期発見早期治療がすべてです。そして1回目の手術でいかにしっかり切除できるかがその後の人生を左右します。
似たようなシコリを見つけた際には動物病院に相談しましょう。





投稿者: 制作

2016.02.03更新



こんにちはclover

昼間は暖かいですが、朝方と夜は寒いですねsad
春が待ち遠しいですcatface

今回は、シャンプーコースにいらっしゃった
チワワのまめたろうくんをご紹介しますnote


まめたろうくんは今回で2回目のシャンプーでしたspa





すごく気持ち良さそうな表情ですcatfacespa







乾かし終わるとフワフワになりました〜〜heart04
おヒゲもカットしてイケメンになりましたねshineshine

まめたろうくんいつもお利口さんにしてくれてありがとうheart04happy01
またお待ちしておりますnotessmile

投稿者: 制作

2016.02.01更新




こんにちはdog

まだまだ寒い日が続きますねsnowwobbly
この時期体調崩されやすいので気をつけましょうsign01

さて、久々の更新になり申し訳ありませんbearing

今回は以前にもご紹介した事がある
チャイニーズ・クレステッド・ドッグのムーミンちゃんと
最近家族に加わった同じ犬種の空くんが
一緒にお泊まりに来てくれましたhappy01heart04



左:ムーミンちゃん 右:空くん

二人はとても仲良しさんですsmile







ムーちゃんはボールで遊ぶのが大好きですhappy02soccer
投げると必ず持ってきてくれますshine







空くんはおもちゃで遊ぶより撫でてもらうのが大好きですlovely
さわって〜と飛びついてきますnote甘えん坊さんですね




二人とも仲良くお泊まり頑張りましたhappy01shine
また遊びにきてね〜heart04



投稿者: 制作

2016.01.25更新

犬の犬歯の切断はたま〜に行う処置です。あまりやりたくない処置ではありますが、咬み癖が治らないコもいて飼い主が大怪我をしてしまったなどでどうしても必要と判断した場合に行います。
 しかしこの処置はただ犬歯を短く切ればいいというものではないのです。もし犬歯を前歯と同じ長さ以下に切断するとどうしても歯髄を露出してしまいます。露髄した歯をそのままにしておくと当然その中には食べ物のカスや細菌が入り込んでしまい感染を起こします。感染を起こしてしまうと歯の根元の部位にも感染が波及し排膿したり歯が抜け落ちてしまうこともあります。当然その間はものすごい痛みが伴います。
これを防ぐために犬歯の切断部分をコーティングします。そうすれば歯髄が露出することはなく感染も起こりません。せっかく歯を切ったのに歯が痛いためにますます怒りやすくなっては逆効果ですのでしっかりとコーティングすることをおすすめします。


歯を切る場合にはまず全身麻酔をかけます。この大きな犬歯で咬まれたらと思うと背筋が凍りますね・・・。犬歯を前歯(切歯)の長さ以下に切断します。




犬歯の切断が終わりましたら、歯髄からの出血を止めます。


次に歯髄部分を4mmくらいの深さで掘ります。それと同時に切断した部分の角張った部分を丸く整えます。そしてその穴の中に水酸化カルシウムを詰め込みます。


次にエッチング剤を塗布し、切断面に凹凸をつけます。これは修復材のつきを良くするための作業です。
数十秒つけたら洗い流します。

そして風乾し、次にグラスアイオノマーセメントを充填します。充填後光照射器で照射し硬化させます。


つぎにボンディング剤を塗布します。再度照射します。


最後にコンポジットレジンを塗布し、歯を形作ります。再び照射し固め、最後に研磨し形を整えます。


照射しています。これにより硬化します。

さらに仕上げとしてボンディング剤を塗布し終了です。


これで髄腔が露出することはなくなりますので感染の心配はありません。


ただ切断するだけとは違い、とても時間のかかる作業です。これを4本終えると大きな手術をした時と同じくらいの疲労感に襲われます。歯医者さんて大変ですね・・・涙


これにて手術は終了です。この後の注意事項として、固いものをガリガリかじらせると覆いが取れてしまうこともありますので骨や固いジャーキーなどは控えた方がいいでしょう。

ps:こういったワンちゃんの歯切りはそれ自体も大変なのですが、性格がキツいコ達なので検査(血液検査やレントゲン撮影)をして、保定して留置を入れ、麻酔をかけることがなによりも大変なのです。終わって帰る時も点滴を取ったりするのにまた一悶着あったりして・・・。犬を飼う場合にしつけというものはとっても重要です。お困りの場合にはまずしつけの専門家であるドッグトレーナー、訓練士に相談してみてください。それでも咬み癖が治らない場合には歯を切るというのも1つの選択肢ですのでご相談ください。


投稿者: 制作

2015.12.11更新

犬の軟部組織肉腫は間葉組織に由来する悪性腫瘍です。

この腫瘍グループには神経線維肉腫、悪性神経鞘腫、血管周皮腫、粘液肉腫、線維肉腫などがあります。
転移は起こしにくい腫瘍ではありますが、局所浸潤性が強く手術で腫瘍のみを小さく切除してしまうと局所再発を起こすことが多い厄介な腫瘍です。基本的には大きく取れる部位に関しては腫瘍周囲の正常組織を含めて大きく取るのが良いとされています。しかし体幹部の皮下であればいいのですが、四肢にできることも多くその場合、大きく取ることが難しく手術が困難になることもあります。小さいうちに見つけて早めに切除するというのがどんな腫瘍でも重要ですね。

このワンちゃんの後ろ足の付け根にできている4㎝大のシコリも軟部組織肉腫です。手術前に組織生検を行い、どんな腫瘍かを知ることは治療を決定する上で非常に重要です。


なるべく広範囲に毛を刈り、手術に備えます。

軟部組織肉腫のような腫瘍は見た目の判断ですべて取り除いたと思っても細胞レベルで周囲組織に残存することがあり、万が一腫瘍細胞が残った場合、再発する可能性が高くなります。再発までの期間は数年間に渡ることもあり注意が必要です。
今回横方向は腫瘍から2㎝の範囲で腫瘍とともに正常組織を切除しました。


さらに腫瘍の底面に関しては頑丈な筋肉の表面の筋膜をバリアにして切除しました。これを行うには筋肉から薄い筋膜を丁寧に剥がしていきます。筋肉と筋肉の間もなるべく筋膜をつながった状態で剥離していきます。


腫瘍の底面の筋膜を剥離し終わった状態です。キレイに筋肉と筋膜を剥がすのにかなりの時間を要します。そこまでしないと腫瘍を残してしまう可能性があるので丁寧に丁寧に進めます。再発して涙を流すより、大変だけど1回目の手術で治してやろうという気持ちで手術を行っています。


切除した腫瘍です。


切除後に今度は皮膚を縫合します。ご覧のように広範囲に切除した後は縫い合わせるための皮膚が足りないことが多々あります。ただしこれを恐れるがあまり、最初から皮膚が縫える範囲で腫瘍を切除すると腫瘍が残存してしまう可能性が高くなります。


皮膚が足りなくなるのは最初からある程度予測しておりますので再建するための皮膚をこの場合は太ももから持ってくることにしました。そのため予め広範囲に毛を刈っておくことが重要なのです。
太ももの皮膚を切開したところです。


太ももの皮膚を腫瘍を切除した部位へ持っていきます。


そして縫合します。痛々しいですね。それでも再発して再度手術するよりはましですよね。ちなみに再発時の2回目の手術は1回目の手術よりもはるかに複雑で切除範囲も広くなります。浸潤の度合いによっては断脚なども考えなくてはなりません。


切除した腫瘍の底面です。キレイに筋膜が覆っているのがわかります。
病理検査の結果では十分なマージンをもって取りきれているということでした。再発の可能性は極めて低くなったと考えます。


手術後2ヶ月くらいしてからの状態です。太ももの部位は内側からの皮膚なので毛が少なくなっています。それに合わせて全身の毛もカットしていたので、少し傷が目立ってしまっていますがまあ致し方ないと思っていただくしかないです。相手は癌ですから・・・(涙)。







投稿者: 制作

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