2015.12.11更新

猫の胸腔内に液体が溜まる病気があります。心臓が悪かったり、血液中のタンパクが減ってしまい血管の中に水分を保持できなくなったり、ウイルス性の炎症が起きたり、腫瘍が原因だったりで液体が溜まってしまいます。さらに猫ちゃんでわりとよく見られるのがばい菌が原因で起こるものがあります。化膿性の炎症でいわゆる膿が溜まります。肺の中の化膿しているところが破れたり、猫同士の喧嘩で胸の外からばい菌が入ってきたりして起こります。症状としては発熱、呼吸数の増加、元気が無くなり酷くなると鼻を広げて呼吸したり、咳が出たりすることもあります。病院に来られる際にほとんどの飼い主様は呼吸が荒いということでいらっしゃいます。そして診察室で診察をしてエコーで胸の中をのぞいてみると液体が溜まっている。その液体を針を刺して抜いてみるとこのような濁った液体が採取されます。この液体を顕微鏡で見ると白血球がたくさんで、さらにはばい菌が見えることもあります。



そして次にレントゲン検査をします。そうすると胸の中が真っ白になっています。すでにある程度液体を抜いた状態でこれですから相当苦しかったでしょう。そして肺も白くなっています。この猫さんは家の外に出ることは無く、外傷も無いので、肺の化膿している部位が破れて胸の中に膿が溜ったとかんがえました。




膿胸の時には胸の中にたくさんのばい菌が存在しますのでなるべくその数を減らすために胸の中を洗浄する必要があります。抗生剤の投与だけで中には改善してくれることもあります。しかし洗浄した方が治りが早いのと炎症を長引かせると炎症によって結合織ができ、肺同士や心臓、胸腔内の内壁などと癒着してしまうことで非常に治癒を難しくさせてしまうことがあります。そのような場合には手術で胸を開いて処置することを要します。
 胸の中を洗浄するにはカテーテルを設置する必要があります。毎回針を刺して抜くのは少し可哀想なので当院では積極的にカテーテルを設置します。このとき短時間ではありますが麻酔が必要です。
毛を刈ってマーキングします。


カテーテルを入れるために穴を開けています。

そこにカテーテルを入れていきます。わりと細いカテーテルを入れていますが洗浄にはこれで十分なことがほとんどです。


カテーテルが抜けないように縫い付けます。そして生理食塩水で胸の中を洗浄します。
洗浄は1日に2〜3回行います。


処置後は酸素室の中で過ごします。この猫さんは肺炎もかなり酷いので酸素室でゆっくりしてもらいました。そして点滴と抗生剤で治療を数日おこないます。細菌培養検査の結果がでましたらそれに従って抗生剤の種類を決定します。



次の日のレントゲン写真です。少し良化しています。この後5日程で呼吸状態が安定し、元気で食欲もでましたので自宅での治療に切り替えました。



3週後のレントゲン写真です。きれいに治っていますね。ここまでくると安心です。もう少しだけ内服治療をして治療が終了します。



現在、6ヶ月経過して再発も無く、非常に元気に過ごしています。

猫さんの胸に液体が溜まる病気は結構多いので、呼吸が速いなと思った時は動物病院で診察を受けましょう。あまり長く様子をみてしまうと重症化し、治療が長期化してしまうこともあります。

投稿者: 制作