2015.02.14更新

猫の大腿骨骨折は比較的多くみられます。交通事故や落下などが主な原因です。
この猫さんの骨折の原因ははっきりわかりませんがおそらく高いところから落ちたのではないかということでした。大腿骨の骨幹の膝に近いところが折れています。よく見ると骨折部位に骨のかけらがみえますね。単純に二つに割れたのではないのがわかります。治療法は多種多様な方法があります。強いプレートとネジでがっちりとめる方法や髄内ピン+創外固定、髄内ピン+プレートなどなどほかにもたくさん考えられます。猫さんの性格も手術方法を決定する重要な因子です。今回の場合、創外固定には耐えられないと考え髄内ピン+プレートで整復しました。この方法はプレートのみの方法に比べると骨折部位の操作が少なくて済みますし、プレートも薄くて小さいもので可能なので骨粗鬆症にもなりにくいと考えます。
10日後の抜糸が終わるとエリザベスカラーも必要なくなりますので元気なネコさんにはちょうどいいですね。





手術後のレントゲン写真です。髄内ピンを入れ長さを保った状態で小型のプレートとネジを使い固定しました。この方法だと整復時の筋肉の分離が最小限で済みますし骨折部をやたらと触らなくていいので、骨自体が治ろうとする過程をなるべく邪魔しないようにできます。さらに当院では筋肉を縫い合わせる前に骨折部位に多血小板血漿を注入します。


多血小板血漿(PRP)とは血小板の中に自己治癒能力を高める因子がたくさんあることを利用する方法です。患者さん(この場合は猫さん)から血液を採血し、血小板をたくさん集めてそれを傷害を受けた部位に注入します。これにより治癒を促進させようという方法です。なんといっても自分の血小板なので副作用が無いと言うのがうれしいですね。人の医療では歯医者さんでインプラントを入れる際に土台部分の骨量を増やす目的で使われていたり、皮膚のシワや古傷を目立たなくさせる美容目的でも使われているようです。

このジェル状の血液の中に血小板が多く含まれています


手術後5ヶ月時の状態です。キレイに骨がついていますので髄内ピンを抜去します。


髄内ピンを抜いた後です。残ったプレートは取ってもいいのですが大腿骨の周りは筋肉量が多く骨に到達するのに筋肉間の分離を結構していかなければならないので問題が無ければそのままにしておきます。この程度の小さなプレートであれば骨粗鬆症になることはないと考えます。

投稿者: 制作