2014.07.11更新

以前、軟部組織肉腫の例をお見せしましたが、他にも何例かお見せしようと思います。

1例目は他院にて手術した後、6ヶ月後に再発してきた例です。軟部組織肉腫の特徴は転移性は低いのですが、局所浸潤性が強く、手術後の再発が多い腫瘍です。
しかし、再発をなるべく起こさないように1回目の手術で最大限可能な限り取り除くことが重要です。

前肢のこの位置にある腫瘍は非常に厄介です。理由は皮膚が足りないからです。体幹部や上腕、太もも辺りでは皮膚が豊富にあり皮弁を使うことで切除部位を覆うことはできるのですが、肘より下や膝より下は皮弁法が困難で腫瘍の切除後の再建に苦労することが多々あります。
写真は、まん中の線は前回の手術痕でその上に腫瘤があります。

腫瘍の底部は必ず筋膜(筋肉を覆っている膜)をバリアとして切除します。このとき皮下の脂肪層の部位で切除すると腫瘍を取り残してしまう可能性が高くなります

縫合時に皮膚が寄りませんので、皮膚にスリット状に穴を開けて縫合します。

手術後1ヶ月の状態です。毛は少ないですが見た目にもそんなに目立たなくなります。まあ見た目よりも腫瘍を取り切ることが最大の目的ですので致し方ないところです。


次は体幹部の軟部組織肉腫の例です。胸部の皮下に直径6センチ大の腫瘍が存在していました。

腫瘍底部の筋膜を慎重に剥離していき切除します。底部への浸潤が強ければ筋肉ごと切除することもあります。


手術後1ヶ月の状態です。体幹部であれば皮弁法により再建します。


次の例は右の脇の下に存在する軟部組織肉腫の例です。指でつまんでいるところに腫瘍が存在しています。組織生検した後1糸縫合しています。


腫瘍は底部の筋肉と強く固着していました。腫瘍の周囲を丁寧に剥離していきます


筋肉にはり付いています


必要であれば、筋肉ごと切除します。筋肉を切開しているところです


腫瘍周囲の正常な組織で可能な限り包み込んだ状態で切除します。決して腫瘍本体が見える状態にはしません。見えた時点でそれはつまり十分なマージンをとった切除ができていないということです。




電気メスの先で示しているのがリンパ節です。リンパ節も同時に切除し転移の有無を調べます。


切除後の写真です。出血がないかを確認し、あれば止血します。


皮下織を縫合し閉創します。




軟部組織肉腫はその浸潤性により手術後の局所再発が起こりやすいとされています。しかし最大限再発を起こさないように1回目の手術で取り切ることが重要です。もし腫瘍だけをくりぬくように切除し再発した場合には、1回目の手術よりも浸潤度は増しており、取り切るには前肢・後肢に存在した場合は断脚を考慮したり、体幹部の場合はより深層の筋肉を広範囲に切除しなければなりません。つまり言いたいことは1回目の手術で腫瘍をすべて取り切るということを一番に考え、見た目が痛々しく見えるかもしれませんが、なるべく多くの腫瘍周辺の正常組織で腫瘍を覆いながら切除するということです。小さな傷で手術するということは見た目はいいかもしれませんが後々大変なことになるかもしれないということを考慮しておくことが大切ですね。

西調布犬猫クリニック

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