2013.09.21更新

肛門嚢アポクリン腺癌は肛門の横にある肛門嚢(肛門腺しぼりをするところです)のなかのアポクリン腺という分泌腺から発生する腫瘍です。腫瘍随伴症候群として高カルシウム血症が50%の割合で起こります。転移率も高く、近くのリンパ節へ50%の確率で転移します。
 おしりの周りが固く腫れてきたり、多飲多尿(高カルシウム血症による)、便が出にくいなどの症状がある場合には動物病院にご相談ください。
 
手術をご紹介します。
このわんちゃんは左の肛門腺が腫大しています。
皮膚を切開したところです。
 

腫瘍周囲の組織を剥離していきます。肛門括約筋に固着していますので肛門括約筋ごと切除します。肛門括約筋は全周の約3分の1以上切除してしまうと便失禁をおこしてしまう可能性があるためそうならないように、かつ腫瘍を取りきるように切除します。このとき便失禁を気にしすぎて腫瘍を残しては意味がありませんので注意が必要です。
 

直腸に接して存在しますので直腸に穴を開けないようにすることも重要です。最後に肛門嚢の出口のところで切り取り終了です。
 

切除後の写真と切除した腫瘍です。
 

骨盤腔内のリンパ節が腫大していたので、そちらも切除しました。


手術後の写真です。かなり肛門括約筋を切除したので術後2ヶ月はたまに便がポロッと落ちてしまうことがあったようですがそれ以降は便失禁はありませんでした。








このワンちゃんは手術後から抗がん剤の治療を行いました。お尻の部位の再発は無く順調に生活していましたが、手術してから1年4ヶ月後に骨盤近くの内腸骨リンパ節の腫大が見つかりました。内腸骨リンパ節に腫瘍が転移しそのまま大きくなり続けると大腸や尿道を圧迫し排便排尿ができなくなってしまう可能性があります。そこで開腹し腫瘍が転移したリンパ節を切除しました。
 
腰の部分で左右の後ろ足にいく血管が二つに分かれますが、ちょうどその分かれる部位の間に腫瘍が存在していましたので繊細な手技が必要でした。切除後の写真ですが大動脈、後大静脈の分岐部が見えます。


陰茎の横を縫合して終了です。


その後、このワンちゃんは2回目の手術の1年後に肺に腫瘍が転移し呼吸不全で亡くなりました。しかしそれまで、おしりの手術部位に再発はなく、便も滞ることなく出続けました。腫瘍を発見してから2年4ヶ月の間、生活の質をよく保ちながら元気に生活できたことを飼い主様はとても満足されていました。




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