2013.08.25更新

犬の乳腺腫瘍は約50%が良性、残りの50%が悪性とされています。発情前に避妊手術を受けることで発生率は低くなりますのでホルモンと関連しているということが示唆されています。治療は手術で腫瘍を摘出することです。悪性度やリンパ節転移の有無などでその後の補助治療(抗がん剤など)が必要になる場合があります。手術の方法はすべての乳腺を切除する方法、左右のどちらか一方をすべて切除する方法、左右いずれかの5つある乳腺のうち2つあるいは3つ切除する部分切除、一つの乳腺だけを切除する単一切除などがあります。



乳腺腫瘍の例です
大きくなって、多発するもの、小さいのが一つだけのものや、ツブツブが散らばっているものなど様々です。
   
   




手術の写真をお見せします。脇の下の大きな腫瘤と第2乳腺付近の皮膚の下に浸潤するように小さな腫瘤が多数存在します。

この例では片側乳腺切除を選択しました。


まず乳腺の真ん中あたりを切皮します


乳腺を上下に分割し、はじめに下の第4・5乳腺を切除します
  
主要な血管を結紮して切除します。


次に上の第1〜3乳腺を切除するため皮膚をメスで切皮します。


皮下織を腹筋の筋膜から丁寧に剥がしていき、切除します。

脇にあるリンパ節の状態を調べるためにリンパ節も切除します。鉗子で持っているのが腋下リンパ節です。


すべての乳腺を切除したのち切開創に糸をかけ、縫合します。これは創を寄せるための糸です。




仕上げにナイロンの糸で皮膚を綺麗に縫って終了です。


見た目は傷も大きくかなり痛々しいですね。手術をしている最中から終了して約2・3日の間は痛み止めの点滴をします。術後の回復には疼痛管理が重要です。

このコの場合は乳腺腺癌(乳ガン)という病理診断結果でした。腫瘍は取りきれておりましたが、リンパ節にがん細胞が入り込んでいたため、手術2週後より約半年間抗がん剤にて補助治療を行いました。術後3年経った現在も再発や転移もなく元気に生活しています。どんな腫瘍もそうですが、早期発見早期治療が重要です。乳腺腫瘍をほっといたがために肺に転移し呼吸不全でなくなっていくのを多く見てきました。しこりに気付いたら動物病院にて診察を受けましょう。さらに予防という意味で早期に避妊手術を行うことも重要です。

東京都調布市 西調布犬猫クリニック 
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投稿者: 制作